楽天モバイルの自社回線(MNO)が、2020年4月8日から本格サービスを始めると発表した。
料金プランは、月々2980円(以下、税別)の1種のみ。自社回線エリアではデータ使い放題で、最初の1年間は300万人が無料になるという。
「データ無制限」「電話かけ放題」を掲げる
20年3月3日に行われた正式プラン発表会では、楽天の三木谷浩史会長兼社長みずから、自社回線の正式プランを発表した。名称は「Rakuten UN-LIMIT(楽天アンリミット)」。わかりやすい1種のみを用意し、別プランは「将来的にも出す予定はありません」(三木谷氏)と明言した。
今回発表された正式プランでは、自社回線エリア内のデータ通信が使い放題となる。ただ楽天モバイルは現在、自社エリア拡大を進めているが、多くの地域でKDDI回線をローミング(提携会社の回線を利用できること)している。ローミングエリアの場合には、月々2GBが通信上限(超過後は128kbps、高速通信分の追加は1GB500円)となるため、スタート時から「データ無制限」の恩恵を得られるのは、東名阪のユーザーが中心になってくるだろう。海外でも66の国と地域で、毎月2GBのデータ通信ができるという(SMSは無料)。また、電話やSMSをまとめた新サービス「楽天Link」を利用すると、国内通話も無制限で「かけ放題」になる。
そして最大の目玉は、300万人を対象に「1年間無料」とすることだ。最大限に活用できるのは、まだ一部地域に限られるが、2980円×12か月=約4万円が節約できるとあれば、興味を持ってみる人もいるだろう。では、本当のところ、実用に耐えるのだろうか。
基地局&通信衛星で「つながらない」をカバー
楽天モバイルでは19年10月から、自社回線の「無料サポータープログラム」を行っている。居住エリア(東京23区、名古屋市、大阪市、神戸市)と年齢(18歳以上)をしぼって参加者を募り、通話とデータ通信が期間中無料になるもので、募集は1次(5000人)、2次(2万人)に分けて行われた。サポータープログラムは、当初20年3月末までの予定だったが、正式プラン開始までに延長されている。
筆者はプログラムを利用し、この1か月ちょっと、東京23区の自社回線エリア内で毎日使用してきた。当初の「つながりにくそう」とのイメージよりは快適に使えているが、電車内ではデータが「詰まる」感覚が多々あるし、音声通話がしづらい場面もあった。少し厳しい言い方をすれば、まだまだ発展の余地がある。
楽天モバイルは、20年3月末までに、3432の基地局設置を目指している。3月3日の会見では、すでに2月時点で3490局を達成したとし、来年3月までの目標8600局も大幅に前倒しする予定だとした。また、あわせて資本業務提携を発表した米AST社による通信衛星ネットワークを通して、エリア空白地をなくす方針も示している。
ただ、エリアが確保できても、回線が安定しなければ意味がない。「1年無料」となる300万人は、単純計算でサポータープログラムの100倍以上となる。ユーザーが増えて、負荷がかかった際に、現状の速度や通信環境を保てるか。ツイッター上では、無料期間は「実質サポータープログラムの1年延長ではないか」と見る向きもある。
各社の料金プランと比較すると...
約3000円でデータ無制限、しかも初年無料。利用者にインパクトを与えた「Rakuten UN-LIMIT」に、他社はどう対応するのだろうか。三大キャリアと呼ばれるNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクは、いずれも大容量もしくは無制限プランを7000円前後に設定している。一見すると「半額以下」になるが、過疎地でもつながる傾向にある3社と比べると、エリア面では劣る。
MVNO(他社回線を借りた通信事業)による「格安SIM」とも比較してみよう。たとえば通話ありで3000円前後のプランを見てみると、LINEモバイル(12GB)が3200円、mineo(10GB)が3130~3570円、IIJmio(12GB)が3260円といった価格設定がされている。楽天基地局が乏しく、ローミング前提の地方であれば、当面こっちを選んだ方がよさそうだ。
価格設定で言えば、「サブブランド」と呼ばれる、大手キャリア系列のサービスに近い。ソフトバンクが運営するワイモバイル(3GB)が2680円、KDDI傘下によるUQモバイルが(9GB)が2980円。どちらも格安SIMよりデータ容量は減るが、代わりに通信速度の安定さには定評がある。ここのユーザー層をいかに切り崩せるか。ひとまずの評価軸は、そこにありそうだ。
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)