新型コロナウイルスの感染拡大に伴う小中高校の休校で、各地の学校給食もなくなり、牛乳が余って酪農家がピンチになると訴えるツイートが反響を集めている。
著名人も窮状を知って、次々にツイッターなどでエールを送っている。現状はどうなのか、酪農関係の団体に話を聞いた。
酪農家らのツイートが大反響
休校について、安倍晋三首相が2020年2月28日に要請し、翌29日に会見すると、ツイッターでは、関係者らから困惑の声が次々に上がった。
給食がなくなることへの反応もその1つで、ある酪農団体の関係者は、このままでは給食に出す牛乳が余ってしまい、酪農家が廃業に追い込まれかねないとして、牛乳や乳製品の購入をツイッターで呼びかけた。
また、別の酪農家とみられる男性は、絞った生乳が廃棄になったり、牛が処分されたりするのを防ぐため、チーズやヨーグルトなどの乳製品も買うように訴えた。
これらのツイートは、大きな反響を呼び、10万件以上もの「いいね」が付いている。
買い占めへの心配の声もあったもの、酪農家らへの激励の声が続々寄せられた。「できるだけ協力しますよ」「いつも飲んでる飲み物をなるべく牛乳にしよう」「クリームシチューで少しでも消費のお役に」などと書き込まれている。
著名人も、次々に反応している。
芸能人では、シンガーソングライターの尾崎亜美さん(62)は3月1日、「酪農家の方の悲痛なツイートを拝見したら居ても立っても居られなくなりダッシュで牛乳を買ってきました」とツイッターで明かした。また、タレントの中川翔子さん(34)とシンガーソングライターの矢野顕子さん(65)は、前出のツイートの1つをリツイートして、投稿者に感謝されていた。
加藤一二三さん「明日から倍量消費します!」
文化人では、将棋棋士の加藤一二三さん(80)が3月1日、ヨーグルトやカマンベールチーズを毎日食べているが、「明日から倍量消費します!」とツイッターで宣言した。料理研究家でユーチューバーのリュウジさん(33)も同日、「給食がなくなり牛乳が余っていると聞いた」として、レアチーズケーキなどの牛乳救済レシピをツイッターで解説している。
企業からも動きがあり、料理レシピサイトを運営するクックパッドは2日、クックパッドニュースのツイッターで、「牛乳の大量消費にお役立て下さい!」として、牛乳を使った焼きプリンなどのレシピ集を公開した。また、コンビニ大手のローソンは同日、給食で牛乳提供がなくなることから、3月9~20日の間、MACHI cafeで提供する「ホットミルク」の商品を半額の税込65円で販売すると発表した。
給食に牛乳を提供できなくなることで、酪農家らの状況は、実際どのようになっているのだろうか。
1都8県の生乳を乳業メーカーに卸している関東生乳販売農業協同組合連合会は2日、業務部長がJ-CASTニュースの取材にこう話した。
「乳房が炎症を起こしてしまいますので、牛の乳は、毎日絞る必要があり加減はできないです。毎日、労働費用が生じますので、売れないと酪農家はそれだけ損をすることになります。政府が休校を要請したときは、生乳の売り先がなくなると確かに困りました」
しかし、学校が休みに入ると、事態はちょっと変わってきたという。
家庭での消費増などでピンチ脱したものの...
「今度は、家庭で牛乳を飲むようになり、スーパーで牛乳の売れ行きが伸びたと聞いています。買い占めの影響もあるかもしれません。また、ネット上で酪農家を救うために消費の呼びかけがあったこともあって、牛乳などを買っていただいていると思います。ありがたいことに、今は、想定した混乱にはなっていないですね」
もっとも、この売れ行きが一過性だとすると、今後は厳しくなる可能性もあるとした。
生乳を買う乳業メーカーでつくる日本乳業協会は、企画広報部の担当者がこう取材に話した。
「学校給食が減った分は、売り上げが減ることになります。急に需要が減って困ったことではありますが、家庭で牛乳を飲んだり乳製品を食べたりする機会にもなっているようです。スーパー用などに製造が振り向けられているようで、原料は一緒ですので、飲料分をバターやチーズなどの加工分に回すこともできます。ただ、工場の稼働能力などに依存しており、給食で減った分とイコールには必ずしもならないですね」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)