あと10年もすると、「磁気の切符」が消えるかもしれない。
阪神電気鉄道では2020年3月~9月(予定)まで、QRコードを用いた乗車券の実証実験を行うことを発表した。「磁気の切符」に代わるQRコードの乗車券は本当に便利なのだろうか。
阪神電鉄が行う実証実験
1月23日、阪神電気鉄道はQRコードを用いた乗車券に関する実証実験を行うことを発表した。これはスマートフォンもしくは紙媒体のQRコード式乗車券をIC専用改札機に取り付けた2次元バーコードリーダにかざして入出場する。対象者は阪神電鉄の関係者に限られ、対象駅は大阪梅田駅、野田駅、尼崎駅、西宮駅、神戸三宮駅となる。
今回の実証実験の背景として阪神電鉄は「旅客の利便性向上や磁気券削減に向け」と説明している。
実は磁気券は普通の紙とは異なり産業廃棄物として処理しないといけない。一方、QRコードが付いた乗車券は普通の紙として処理できる もし、QRコード式乗車券が広まれば、「磁気の切符」は姿を消すだろう。日々の鉄道利用に直接関係するだけに、阪神電鉄が行う実証実験は興味深い。なお、QRコードを用いた乗車券の実証実験はJR東日本でも行う。
ロシアでは「押し付ける」感じ
視野を広げると既に紙媒体やスマホを使ったQRコード式の切符は実用化されていることに気づく。国内では2014年に沖縄都市モノレールが紙媒体のQRコード式乗車券を導入している。
筆者はロシア・モスクワの各国際空港と都心を結ぶ空港鉄道「アエロエクスプレス」でレシート式のQRコード式乗車券を体験した。今回の実証実験と同じようにQRコードを改札機にある2次元バーコードリーダに"かざす"わけだが、ICカードよりも反応は悪い。「かざす」というより「押し付ける」の方が近い。とは言っても、慣れると特に問題はない。
航空業界ではスマホを使ったQRコード式の搭乗券が定番となっている。スマホ式の搭乗券は切符を探す手間が省ける点は便利だが、QRコードを表示するにはスマホの操作が必要なため、一定の時間を要する。個人的には簡単にポケットの中で見つけられるレシート式のQRコード切符が好きだが、今後どのような切符が登場するのだろうか。
(フリーライター 新田浩之)