セブン「攻めの一手」は吉か凶か 米コンビニ買収交渉の行方

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   小売り大手のセブン&アイ・ホールディングス(HD)が米石油精製大手マラソン・ペトロリアム傘下のガソリンスタンド併設型コンビニチェーン「スピードウエー」買収について、独占交渉を進めていることが明らかになった。2020年2月20日午前、外国プレスが報じ、日本の新聞も20日夕刊から21日朝刊で一斉に追いかけた。セブン&アイは20日、「新たな成長戦略について提携や買収など様々な可能性を模索しているが、現時点で決定された事実はない。開示すべき事実が決定された場合には速やかに公表する」との声明を発表した。

   実現すれば買収総額は約220億ドル(約2兆4500億円)に上るとみられる。日本企業による近年の海外企業買収では、武田薬品工業によるシャイアーの買収(約6.9兆円)、ソフトバンクグループによる英半導体設計大手ARMホールディングスの買収(約3.3兆円)に次ぎ、3番目の買収額になる。

  • セブン&アイHDは2月20日、買収検討報道を受け「現時点で決定された事実はない」と発表した。
    セブン&アイHDは2月20日、買収検討報道を受け「現時点で決定された事実はない」と発表した。
  • セブン&アイHDは2月20日、買収検討報道を受け「現時点で決定された事実はない」と発表した。

国内小売り事業の先細り懸念

   セブン&アイは米国で、2005年11月に米セブン-イレブンを完全子会社化、18年1月には米石油大手「スノコ」からコンビニ事業の一部1030店を約31億ドル(約3452億円)で買収、その後の店舗統廃合を経て2019年末時点で約9000店を展開していて業界1位。スピードウエーはガソリンスタンド併設型のコンビニ事業を手がけ、店舗数は約4000店。今回の買収が実現すれば店舗網は計1万3000店に膨らみ、コンビニ業界のシェアは1割に迫る。

   海外事業の強化に乗り出した背景には、国内小売り事業の先細り懸念がある。コンビニは1970年代に登場してから成長し続け、現在、主要7社で国内5万5000店超、年間売上高は11兆円を超えるまでに発展した。だが、人口減少を背景に店舗数は2019年に減少に転じ、1店舗当たりの売上高は頭打ちになっている。

   セブン-イレブンは1年半の間に国内約1000店の閉店・移転を予定。人手の不足を受けて24時間営業の一部見直しなどビジネスモデルの見直しを強いられ、高収益のキープは容易ではない。コンビニ以外は、さらに深刻。グループの百貨店そごう・西武や総合スーパーのイトーヨーカ堂は2019年10月、店舗閉鎖や人員削減などを含む構造改革を発表する事態に追い込まれている。

   そんな中で、米国事業を「グループの成長ドライバー」(井阪隆一社長)と位置づけるセブン&アイの起死回生を狙った一手が今回の買収計画ということになる。セブン&アイの2019年3~11月期決算で、米国を中心とする海外コンビニ事業の営業利益は764億円と、国内コンビニの半分に満たないが、伸び率は前年同期比11.4%増と、グループの事業別でトップという数字の裏付けもある。

成立?不成立?、成立するなら金額は...

   ただ、株式市場は、買収計画を冷ややかに受け止めた。2月20日の東京株式市場でセブン&アイ株は、朝方の4300円台が、午前10時30分過ぎに買収交渉の情報が伝わると急落し、終値は前日比376円(9%)安の3920円と、約1カ月半ぶりの安値となり、21日は一時、3837円まで下げる(終値は3837円)など、軟調。1日の出来高がこのところの100万株台から500万株台に膨らみ、買収交渉の見方が強弱入り乱れていることをうかがわせる。

   市場の懸念は、なんといっても2兆円超の買収価格だ。米国ではコンビニを石油企業系が手掛けるケースは多く、収益率の低さから最近は本業から切り離す動きも目立つが、米セブン-イレブンやライバルのアリメンテーション・カウチタード(カナダ)などが積極的に買いに動いており、まとまった店舗数を持つ買収候補は限られ、価格がつり上がる傾向にあるとされる。

   割高な価格なら、買収金額と対象企業の純資産の差額である「のれん代」が発生、会計上、毎年償却する必要が出てくる。今回の買収が成立した場合、「年間の償却費が数百億円規模で発生する可能性があり、業績面でのプラス効果を相殺する」(アナリスト)との見方と、「米国市場では消費が拡大していて、着実に収益を上げていける」(大手証券)との受け止めが交錯する。

   まず、買収がどの程度の金額で成立するのか、不成立に終わるのかが注目点だが、成立したとしても、セブン&アイの思惑通り、順調に稼ぎを上げていけるか、目が離せない。

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