住宅大手、大和ハウス工業の株価が低迷している。
2019年4~12月期連結決算は純利益が過去最高を更新し好調だったものの、祖業であり今も経営の柱の一つである国内戸建て事業などの採算が悪化していることが嫌気され、投資家の売りが集まったようだ。市場全体が新型コロナウイルス流行に揺れる中、苦戦が続く。
「祖業」の戸建てが...
まず2020年2月13日に発表された決算内容を確認しておこう。2019年4~12月期連結決算の売上高は前年同期比7.2%増の3兆1633億円、営業利益は8.1%増の2896億円、純利益は6.2%増の1956億円だった。
同期間として純利益が過去最高を更新したのは8年連続。アマゾンなどによるインターネット通販の拡大を受けて需要が増えている物流施設が好調で、成長のけん引力となっている。賃貸住宅や戸建て住宅の受注低迷を補って余りある、というのが現状だ。
一方で大和ハウスは決算とは別に「受注速報」という業績データを毎月発表している。4~12月期決算に先立つ2月10日発表の1月分が、投資家心理を冷やした一因だ。
戸建ては前年同月比21%減と、今期最悪の数値。賃貸住宅も28%減で9月(54%減)以来の落ち込みだった。戸建ては8月以降、賃貸は6月以降、前年割れが続き、月を追うごとに状況が悪化している。消費税率アップ後の需要の反動減が尾を引くなか、人件費や材料費の高騰が採算悪化を招いている。
こうした中、14日の株価は一時前日終値比6.6%(233円)安の3323円に急落。その後も低落傾向が続き、27日の終値は3079円まで落ち込んだ。新型コロナウイルス問題で市場全体に衝撃が走る中、厳しい戦いを強いられている。
今後「反転」の可能性も
大和ハウスは、樋口武男氏(81)が2001年に社長に就任して以降、拡大路線を突き進んだ。2019年6月に樋口氏がCEO(最高経営責任者)を退任し、代表権のない会長に就くまでの18年の間に、連結売上高は1兆円余りから4兆円余りへ約4倍に膨らんだ。戸建てで培った住宅ビジネスのノウハウを物流施設や商業施設のような大企業向けに生かし、受注を積み重ねた。
ただ、急成長を遂げた陰でガナバンス(企業統治)がおろそかだったとの指摘もある。実際、過去1年の間に中国グループ会社の多額の不正流用や、国の基準を満たさない基礎や柱を使った賃貸アパートや戸建て住宅が約4000棟に上った問題が発覚。これを受けて11月に企業統治強化策を発表した直後の12月に工事監督の国家資格を不正に取得していたことが明らかになり、20年1月に外部調査委員会を設けるにいたっている。
「相次ぐ不祥事で株価が下落した局面もあったが、11月のガバナンス体制再整備で対応に一区切りが付く見込み」(SMBC日興証券)と見られていただけに、12月発覚の不祥事は一定のインパクトがあった。樋口氏という「中興の祖」が退任し新体制に移るなか、こうした不祥事が重なることで株価にも下押し圧力となっていた。そうした背景のもと、全体として業績は堅調ながらも戸建ての不振をきっかけに株価が急落したという構図だ。
ただ、2月に入って米国での戸建て住宅事業買収を発表するなど、なお事業拡大に余念がない。祖業の国内戸建て事業の2019年3月期のセグメント売上高は、商業施設の約半分、物流などの「事業施設」の4割弱にとどまる。時代に合わせて事業構造を組み替えつつ成長を遂げているとみる向きもあり、今後の材料によって株価が反転する可能性もありそうだ。