中国における新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)の感染者の増加数は、2020年2月25日現在、全省市のうち、湖北省以外はゼロか一桁となっている。湖北省は499人増えたが、その次に多いのは香港(7人)であった。来週から湖北省も一桁になることを中国の市民は心より期待している。
世間の話題も徐々に新型肺炎の後、経済をどう立て直すかに移っている。様々な民間のシンクタンクや国の研究機関が研究分析を発表するなか、注目されているのは、清華大学産業転型顧問委員会主席で、中国国際経済交流センター副理事長の黄奇帆氏と、清華大学国家金融研究院院長で、IMF元副専務理事の朱民氏の二人であろう。
経済成長に比べ、立ち遅れた医療システム
直轄市の重慶で長年市長を経験した黄奇帆氏は、中国が経済発展の過程で工場やオフィスビル、住宅の建設に重点を置いた一方、病院の設立や医者看護関係の人材の育成は非常に立ち遅れているとしている。
「全中国の病院の数は、改革開放の1978年に9293あり、2018年に3万3009に増加し、3.55倍増でしたが、同じ時期に中国のGDPは240倍も増加しています」
黄氏は2月22日のレポートで、こう指摘した。
北京、上海、深センなどの大都会では外国と比べても遜色のない立派な病院はたくさんあるが、武漢などの地方都市に行くと、病院などが非常に不足している。さらに武漢より小さな都市に行くと、病院らしい病院すら少ない。
2015年の医療費支出の対GDPの比率は、日本が10.9%に対し、中国はその半分の5.3%だ。一人当たりの医療費支出金額も、日本の3733ドルに対して中国はその11.4%にあたる426ドルに過ぎない(総務省統計局『世界の統計 2019』)。
黄氏は「今の病院数を倍増して、少なくとも5万か6万まで持っていき、政府主導のもとで高品質の設備を備えた病院を大量に作っていくべきです」と提案する。
それを達成するためには、今年の全国人民代表大会で取り上げる予定だった第14次五カ年経済発展計画(2021から25年まで)で、少なくとも2000億元から3000億元(日本円で数兆円)の予算を用意する必要がある。