東京都立高校の一般入学試験が2020年2月21日、終わった。東京都教育委員会によると、今年の全日制の募集定員は3万399人。これに対して、4万30人が受験。倍率の1.32倍は、前年度と同じで、05年度と06年度以来の低水準だった。
少子化の影響もあって、都立高校ではすでに再編が始まっているが、厳しい状況は変わらない。追い討ちをかけるように、4月からは「私立高校授業料の実質無償化」が始まる。都立高に生徒が集まらない原因の一つになっているとみられる。
私立高、初年度にかかるお金は平均93万4038円也
「うちの家計では、私立高校に通わせるのは厳しい」
「お金のことで子供の進路を狭めたくない」
などと、経済的な理由で子供が希望する私立高校への進学をあきらめさせていた親は、少なくなかっただろう。
授業料などが比較的安い都立高校に比べて、とにかく「私立はお金がかかる」。東京都生活局が2019年12月12日に発表した「令和2(2020)年度 都内私立高等学校(全日制)の学費の状況」(調査は東京都内にある私立高231校)によると、初年度にかかる納付金(入学金などを含む総額)の平均額は93万4038円で、前年度に比べて7748円増えた。
納付金の平均額は毎年上がっていて、今年値上げした高校は53校、値下げした高校は5校、据え置きは173校で、最高額は190万6500円、最低額は63万9800円だった。
入学後2年目、3年目にも必要になる授業料だけをみても、平均額は46万6708円で、前年度から6162円値上がりした。授業料の最高額は玉川学園高等部(国際バカロレア)の134万1000円、最低額は錦城学園と日本体育大学桜華の34万8000円だった。
私立高へ進学するためには、かなりの経済的負担がかかることがわかる。
それでも、私立高が人気なのは大学への高い進学率にある。難関大学への進学率の高い私立高や大学受験の面倒見がいい私立高は人気で、「現役で、一つでも上のランクの大学に入れてもらえる指導力は都立高校よりも確か」(受験生をもつ親)とされる。
大学進学ばかりではない。都立高に限らないが、公立高校はいじめや部活問題でも、私立高に比べて対応が「甘い」イメージを持つ人も少なくない。
私立高側も、かわいらしい制服を用意したり、東大コース、難関私立コース、芸術・スポーツクラスなどと予備校のような特別クラスで「特訓」させたりと、優秀な生徒を集めるために、授業に工夫を凝らしている。
統廃合の行方
現在、都立高に通う生徒の授業料は、「高等学校等就学支援金」制度によって無償化されている。また、私立高の授業料については両親の年収によって支給額は異なるが、授業料の一部に充てられるよう「補助」されている。ただ、もともと授業料が高い私立高の場合には、支給額との差額を両親が負担する必要があった。
それが、2020年4月からは授業料の支給額が上限39万6000円に引き上げられた。ただし、「年収590万円未満」(両親、高校生、中学生の親子4人家族で、両親の一方が働いている場合の目安)に限る。
授業料の最高額の玉川学園高等部の場合は94万5000円も足りないが、平均額の46万6708円とは7万708円の差。最低額の錦城学園と日本体育大学桜華の授業料は実質的に「無償化」されることになる。さらに、こうした「高等学校等就学支援金」制度とは別に、東京都では年収590万円以上の世帯に対しても助成金を出している。
一方、都立高は2003年に学区制の廃止などの入試改革に取り組むと同時に、高校の統廃合に取り組み、生徒を確保してきた。ただ、その半面、日比谷や戸山、小石川、九段(中高一貫校)、国立といった、かつての名門校や進学校と、他校とのあいだで人気を二分する事態にもなっている。
今後ますます「都立高離れ」が加速しそうで、統廃合が進みそうだ。