ある子供のために福岡へ...「余裕」のおかげで動けた
身軽になった寺田さんは、本当にやりたかったことへ、残ったお年玉の使い道を転換する。先述した第1希望、YouTubeの制作費として、4K対応の高性能ビデオカメラと、GoProを購入したのだ。あわせて約15万円。これが、チャンネルに劇的な変化をもたらす。
新調した撮影機材で気合が入り、金銭的にも精神的にもゆとりが生まれたことで、思い切った企画ができるようになった寺田さん。19年2月16日に投稿した「障害者の性」を扱った1本の動画が、空前の620万再生を記録した。「障害があってもみんな変わらない」ことを伝えるため、知人女性2人にも出演してもらい、「センシティブな内容」(動画説明より)を正面から取り上げている。
低評価2000件に対し、高評価2万1000件を得るなど感触も良かった。チャンネル登録者数も、1500人程度から一気に2万人超へと跳ね上がった。その後の動画再生数も徐々に安定し、広告収入も増えていく。YouTubeでどうにか生計を立てられるようになっていった。
「車いすYouTuber」の存在が知られていく中、福岡のある母親からメールが届いた。5歳の息子が病気のため、なかなか外で遊べない。寺田さんの動画で笑うのが楽しみで、「息子に会っていただけないか」というお願いだった。
「メールには、その子が余命宣告を受けているとありました。今は落ち着いていても、いつどうなるか分からない。僕の力を必要としてくれる人がいるならと、すぐに会いに行こうと決めました。
これまでリボの40万もあってあまりムチャはできなくて、自然と安パイを選んできました。でもお年玉で余裕ができ、妻と2人で15万円くらいポンと出せました。福岡では、その子の希望でラーメンを一緒に作ったんですが、すごく喜んでくれました。僕も嬉しくなりました。その親子の笑顔は、やりがいある仕事ができたと思わせてくれました」