天皇陛下が語った令和の「多様性」 誕生日会見で「若い人たち」への期待明かす

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   天皇陛下は2020年2月23日、60歳の誕生日を迎えた。

   これに先立つ21日に行われた会見では、改めて天皇としての「つとめ」への決意が語られた。中でも「令和」らしさが際立ったのは、開催が近づく東京五輪・パラリンピックに託して、日本社会の「多様性」の成熟への期待を述べた場面だ。

  • 60歳を迎え、誕生日にあたっての記者会見に臨んだ天皇陛下(宮内庁提供動画より)
    60歳を迎え、誕生日にあたっての記者会見に臨んだ天皇陛下(宮内庁提供動画より)
  • 「まだ還暦」と応じた際には表情がほころんだ(宮内庁提供動画より)
    「まだ還暦」と応じた際には表情がほころんだ(宮内庁提供動画より)
  • 60歳を迎え、誕生日にあたっての記者会見に臨んだ天皇陛下(宮内庁提供動画より)
  • 「まだ還暦」と応じた際には表情がほころんだ(宮内庁提供動画より)

64年の東京五輪と「世界の平和」への思い

   「多様性」についての言及は会見中盤、これまでの60年、そして直近の1年で印象に残った出来事、また東京五輪・パラリンピックに期待することを問われる中であった。

   天皇陛下がこの質問に真っ先に挙げたのは、「初めての世界との出会い」だったという1964年の東京五輪だ。

   閉会式では、選手たちがハプニング的に、国の垣根を越えて一団になって入場し、以後もこのスタイルが引き継がれたことで知られる。4歳でこの光景を目の当たりにしたという天皇陛下は、この体験が「変わらず持ち続けている、世界の平和を切に願う気持ちの元となっているのかもしれないと思っております」。

   さらに1970年の大阪万博では、各国のパビリオンを回り「世界にはこんなにも多くの国があり、一つ一つの国が、さまざまな特色を持っている」ということを知り、「世界との初めての触れ合いの場」になったという。

   その上で、2020年の東京五輪・パラリンピックに期待することとして、

「今回のオリンピック・パラリンピック大会を通して、特に若い人たちに、世界の人々への理解を深め、平和の尊さを感じてほしいと願っています。大会の開催期間中や、その前後に、海外からの選手や、観光客が大勢来日するのを契機に、日本の人々、とりわけ若い人たちが、彼らとの交流を通じ、世界の多様性に対する理解を深め、国際的な視野を広げる機会になることを願うとともに、逆に海外の方にとっても、日本のことを知る、よい機会になれば幸いです」

と語り、特に「若い人たち」に、海外の人々との触れ合いを通じて、平和とともに「多様性」への理解を深めてほしいと強調した。

過去にも「多様性」と「寛容」呼びかけ

   現代の重要なキーワードとされる「多様性」だが、天皇陛下は皇太子時代にも、何度かこのテーマについて言及してきた。

   昨2019年の誕生日会見でも、

「平成は、人々の生活様式や価値観が多様化した時代とも言えると思います。それは、ITその他の科学技術の飛躍的発展によって、更に推し進められた部分もあると思います。今後は、この多様性を、各々が寛容の精神をもって受け入れ、お互いを高め合い、更に発展させていくことが大切になっていくものと思います」

という時代認識を示し、「多様性」と「寛容」の重要さを打ち出している。また、2017年4月の会見ではマレーシア訪問を前に、その社会の印象を「多様性と寛容性」とした上で、こう語る場面があった。

「日本では、協調や譲り合いの精神などが重要視されますが、マレーシアにも『ゴトン・ロヨン』という言葉があり、それは『相互扶助』を意味するそうです。まさに、多様性を抱えるマレーシアの人々が、相手を思いやり、お互いに助け合って、合意を目指すという理念を持っていることの表れだと思います」

新型コロナ、児童虐待・貧困にも言及

   今回の誕生日会見ではこのほか、令和の社会をめぐるさまざまな問題について触れる中で、新型コロナウイルスの流行にも言及があった。

「罹患(りかん)した方々とご家族にお見舞いを申し上げます。それとともに、罹患した方々の治療や感染の拡大防止に尽力されている方々のご労苦に深く思いを致します。感染の拡大が、できるだけ早期に収まることを願っております」

   また、これに続けて、「児童虐待」や「貧困」についても、

「近年の子どもたちをめぐる虐待の問題の増加や、貧困の問題にも、心が痛みます。次世代を担う子どもたちが健やかに育っていくことを願ってやみません」

とのお気持ちを示した。

   令和最初の「天皇誕生日」は、近代の天皇として最も高齢の即位となった天皇陛下が、「還暦」を迎えるタイミングとなった。会見中盤、このことを記者から問われた天皇陛下は、近世以前にはより高齢で即位した天皇もいたとしつつ、

「還暦を迎えるのにあたっては、『もう還暦』ではなく、『まだ還暦』という思いでおります」

と笑顔で応じた。

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