岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち マスク姿のアジア人はなぜ怖がられるのか

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「外でマスク」は医療関係者か重病患者

   コロナウイルスの影響で、日本国内ではマスクをする欧米人もちらほら見かけるようになった。欧米では一部のアジア人を除いて、一般の人のマスク着用はかなり珍しい。マスクをしている日本人を海外で見かけると、私自身、違和感を覚えることが多かった。

   私たち夫婦がフランスを旅した時、ホテルのエレベーターで一緒になった60代くらいのフランス人女性がマスクをしていた。夫らしき男性と一緒だった。

   ヨーロッパを旅することも多いが、西洋人のマスク姿を初めて目にした。私たち夫婦はどこにいても他人と気さくに言葉を交わす方なので、その時も私の夫が「風邪ですか」と声をかけた。

   その女性はおもむろにマスクを外した。すると、口の回りの皮膚が崩れたようになっていて、「皮膚癌で手術をして、今、退院してきたんですよ」と穏やかに答えた。

   「申し訳ないことを聞いてしまった」と私たちは反省した。

   欧米では、病院以外でマスク姿を目にすることがほとんどない。花粉症や風邪などで日本人がよく使うマスクは、「surgical mask(医療用マスク)」と呼ばれている。

   欧米では一般的にそう思われているように、私の知り合いの意見も、「外でマスクをしている人を見かけたら、病院から抜け出してきた医療関係者か重病患者だと思う」と一致している。

   また、顔を覆うマスクは、表情が見えないために不気味な印象を与え、強盗などの犯罪のイメージもある。隠されていることで、不安や恐怖をあおる。

   何年も前に、マンハッタンにあるモスク(イスラム教寺院)に取材に行った時、モスクの規定に従い、頭と顔の一部をヒジャブと呼ばれる布で覆った。そこで知り合ったイスラム教徒の日本人女性とふたりで、その姿のままモスクを出て道を歩いていると、通りがかりの男性に罵声を浴びせられたことがある。

   イスラム教徒への偏見もあるだろうが、顔を隠すことで相手に「恐怖」や「不安」を感じさせるという意味では、マスクはそれに似ているのかもしれない。

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