この連載記事を書いていると、日本にいる大学時代の友人からLINEでタイムリーなメッセージが届いた。
友人は今月(2020年2月)末に息子とニューヨークに行くことになっているが、この新型コロナウイルス騒ぎで危ないのではないかととても心配だ。現地の様子を教えてもらえないか、という内容だった。
「アメリカで心配するべきなのは、コロナウイルスよりインフルエンザだ」と私が伝えると、どうやら友人の心配は別のところにあった。
「コロナ」と呼ばれる日本人留学生
「アジア人に対する攻撃が心配なので、今のニューヨークの空気が知りたい」と言う。
横浜港のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の対応が世界から非難を受けていること、日本のコロナウイルスの感染者が多いこと、彼女の息子の知り合いが、留学先のシアトルで「コロナ」と呼ばれ、いじめられていること、そして西洋人にはアジア人は同じに見えること、などをその理由に挙げていた。
私は友人に、「運が悪ければ、そういうこともあるかもしれない。ただ、嫌な思いをしたくないのであれば、アメリカではマスクをしない方がいいと思う。人それぞれだけれど、私は海外でマスクをしない。マスクをしていると、欧米では重病人だと思われる。欧米の人がマスク姿から受けるイメージが、日本人とはまったく違うから」と返信した。
2020年2月上旬、ニューヨーク市の地下鉄駅で許し難い事件が起きた。マンハッタンのチャイナタウン近くの駅構内で、勢いよく走ってくるアジア人女性の前に男が立ちはだかり、いきなり殴る蹴るの暴行を働き、「俺に触るな」と怒鳴り散らした。女性は顔にマスクを着けており、男はそれを見て「病気のクソ女」と呼んだ。
マスク姿のアジア系やアジア人に対する攻撃は、全米で起きている。
スーパーマーケットでマスク姿のアジア人女性を目にした白人女性が、「この人はコロナウイルス感染者よ。追い出して」と大声で叫んだ。
中国人女性がマスク姿で歩道を歩いていると、向こうから歩いてきた白人男性が避けるように車道に移った。
バスでマスク姿のアジア人女性が隣にすわると、白人女性がその人を見ながらおもむろにマスクを取り出して着け始める、という例も複数、耳にした。
コロナウイルスをめぐって、マスクをしていないアジア人への嫌がらせやいじめ、差別も目立つが、ここではマスクに焦点を当てたい。