2019年12月に社長兼最高経営責任者(CEO)に就任したばかりの内田誠氏はいきなり正念場を迎えている。
業績悪化に歯止めがかからない日産自動車。2020年2月13日に発表した2019年4~12月期の連結決算は、本業の儲けを示す営業利益が前年の同じ期間と比べて82%も減少した。この期間で全世界の自動車需要は5%減少したが、日産の販売台数は8%減少している。
レバノンへの逃亡劇で世界を騒がせたカルロス・ゴーン前会長が遺した経営上の「呪縛」から容易には抜け出せず、新たな問題も――。
「ゴーンの呪縛」逃れられず
「足元の業績悪化は想定を超えている」。横浜市で開いた記者会見で決算内容を説明した内田氏は、日産の置かれた経営環境の厳しさをにじませた。2019年4~12月期の売上高は12%減、純利益は87%減と惨憺たる有り様だった。543億円だった営業利益の水準は、四半期決算の発表を始めた2005年3月期以降で最も低く、あのリーマン・ショックが起きた2008年さえも下回った。2019年10~12月期だけで見ると、純損益は260億円の赤字(前年同期は704億円の黒字)となった。
日産に限らず、世界の自動車メーカーはCASEと呼ばれる次世代技術の開発競争にさらされて研究開発費が膨らむ一方、ライドシェアやカーシェアが普及するように自動車は「所有」するものから「利用」するものへと変化しつつある。こうした経営環境では、売り上げ(販売台数)は減少し、増加する研究開発費は利益を押し下げている。それでも日産の落ち込みが著しいのは、ゴーン前会長の「呪縛」、つまり拡大路線がもたらした後遺症が世界各地に残り、そこからの回復がなかなか進んでいないのだ。
最も端的な例が、日産の主力販売先である北米だ。ゴーン時代にはとにかく販売台数を増やすために、販売店に過度な販売奨励金を拠出して、販売店はそれを減資に値引きして販売台数を増やしていた。この結果、売り上げは増えても利益が出にくい構造となってしまった。
改めようとして、今度は販売奨励金を削減して利益率を高めようとしても、かつての安売りによって日産のブランド力は低下してしまっており、販売台数が伸びないという負のスパイラルに陥っているのだ。また、ゴーン時代に新型車開発を絞った時期があり、それが現在に響いて新型車の市場投入が乏しくなっていることも販売で苦戦する要因になっている。