神戸大学医学研究科感染症内科教授の岩田健太郎氏が2020年2月18日、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)の集団感染が広がるクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」に乗船したとして、「中はものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました」などと船内の感染対策のずさんさを動画を通じて指摘し、衝撃が広がっている。
岩田氏が伝えた船内の管理体制の是非について、関西福祉大学教授で感染症に詳しい医師の勝田吉彰氏に、J-CASTニュースが「セカンドオピニオン」を求めたところ、「言っている内容は妥当です」との見解を示した。
「グリーンゾーンもレッドゾーンもグチャグチャ」
岩田氏はダイヤモンド・プリンセス(DP)号に乗船したという18日にYouTubeで約14分の動画を公開。「今からお話しする内容は神戸大学など所属する機関とは一切関係なく私個人の見解です」と断った上でレポートした。
動画によると、日に日に感染者が増えるDP内の感染対策体制を懸念していた岩田氏は、厚生労働省で働く人物を通じ、DMAT(災害派遣医療チーム)のメンバーとして乗船。「DPの中はものすごく悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました。これはCOVID-19に感染してもしょうがないんじゃないかと本気で思いました」との感触を覚えたという。
理由の1点目は、船内をウイルスがいるかもしれない「レッドゾーン」と、ウイルスが全くない安全な「グリーンゾーン」とに分けるという「鉄則」が守られていないことだとしている。
「DPの中はグリーンもレッドもグチャグチャになっていて、どこが危なくてどこが危なくないのか、全く区別がつかない。
ウイルスは目に見えないですから、完全な『区分け』をすることで初めて自分の身を守れるのですが、どこの手すり、どこのじゅうたん、どこにウイルスがいるのか分からない状態で、いろんな人がアドホックにPPE(個人防護用具)をつけてみたり、手袋をはめてみたり、マスクをつけてみたりつけなかったりするわけです。
クルーの方もN95(高密度の医療用マスク)をつけたりつけなかったり、あるいは熱のある方が自分の部屋から出て、歩いて医務室に行ったりするというのが、通常に行われています」
こうした体制のため、「検疫所の方と一緒に歩いていて、ヒュッと患者さんとすれ違ったりするわけです。『患者さんとすれ違っちゃう」と笑顔で検疫所の職員が言っているんです」といったこともあったという。