クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」内部について、「ものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思った」などと訴える動画が波紋を広げている。
動画は感染症を専門とする岩田健太郎・神戸大教授が撮影し、新型コロナウイルスによる船内の感染リスクが高いことを訴えた。この動画が拡散されるなか、政府は「感染拡大の防止を徹底して取り組んできている」と主張する一方で、野党からは事後検証が可能なように「記録だけはしっかりととっておくこと」を求める声が上がっている。
「グリーンもレッドもグチャグチャに...」
岩田氏の動画は2020年2月18日夜に公開。災害派遣医療チーム(DMAT)の一員として乗船が認められたという。動画での岩田氏の説明によると、ウイルスがあるかもしれない「レッドゾーン」とウイルスがない「グリーンゾーン」を区別し、レッドゾーンでのみ防護服の着用するなどして身を守るのが「鉄則」だが、船内では「グリーンもレッドもグチャグチャになっていて、どこが危なくてどこが危なくないのか全く区別かつかない」、「ものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思った」などと批判している。
この動画の存在は、早い段階で永田町や霞が関でも話題になった。厚生労働省の橋本岳・副大臣は2月19日、岩田氏について
「私の預かり知らぬところで、ある医師が検疫中の船内に立ち入られるという事案がありました。事後に拝見したご本人の動画によると、ご本人の希望によりあちこち頼ったあげくに厚生労働省の者が適当な理由をつけて許したとの由ですが、現場責任者としての私は承知しておりませんでした」
とツイートし、
「専門家ともあろう方が、そのようなルートで検疫中の船舶に侵入されるというのは、正直驚きを禁じ得ません」
などと岩田氏の行動を非難。船内の状況については
「多くの専門家のお力を船舶内外からいただき、臨船検疫を行っています。ただ実際に職員の感染が判明してしまった状況の中で、完全なコントロールができていると申し上げることはできません」
とした。
菅義偉官房長官は同日午前の記者会見で、動画で船内の状況が指摘されていることを踏まえて船内の感染リスク管理について問われ、
「感染拡大の防止を徹底して取り組んできているところ」
などと答弁。動画については論評しなかった。