「世紀の番狂わせ」から30年 タイソンを倒した男、ダグラスの栄光と苦闘とは

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試合のオッズは42対1でタイソン圧倒

   王者タイソンは37戦全勝、33KOと驚異的なレコードを誇っていた。一方のダグラスはすでに4敗を喫しており、世界的には無名のボクサーだった。世界中のボクシングファン、関係者の興味はただ一点、タイソンが何ラウンドにダグラスをKOするかに集まった。ダグラスへの期待の低さを物語るように、この試合のオッズは42対1だった。東京ドームに詰めかけた5万を超える観客のうち何人がダグラスの勝利を予想しただろうか。

   初回、両者の動きは対照的だった。体を左右に振りながら前進するタイソンにいつものキレがない。いかにも体が重そうで、ヘッドスリップでパンチをよけきれず左ジャブをまともに食らい続けた。対するダグラスは持ち前のスピードとフットワークを生かし、向かってくるタイソンをうまくさばいて寄せ付けない。回を追うごとにダグラスのパンチはスピードに乗り、的確にタイソンの顔面をとらえた。

   迎えた8回、2分55秒過ぎだった。劣勢を強いられるタイソンの起死回生の右アッパーがダグラスの顎を打ち抜いた。ダグラスは大の字にキャンバスに崩れ落ち、レフリーがカウントする。そしてカウント「9」でダグラスが立ち上がると同時に8回終了のゴングが鳴った。結果からいえば、ゴングに救われたダグラスが10回に右アッパーからの連打でタイソンを仕留め、「世紀の番狂わせ」が完結する。

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