楽天モバイルの自社回線(MNO)が、2020年4月の本格始動に向けて、整備されつつある。
2月現在では、利用者を絞った「無料サポータープログラム」を行っている。当初5000人だったユーザーは、1月の2次募集で最大2万人に広げられた。そこに滑り込んだJ-CASTニュース記者が、実際に使ってみた印象は――。
SIMカードは差し替えられない
「無料サポータープログラム」は19年10月にスタート。居住エリア(東京23区、名古屋市、大阪市、神戸市)と年齢(18歳以上)を対象に参加者を募り、通話とデータ通信が期間中無料になるプログラムだ。1次募集では定員5000人に応募者が殺到し、1日で定員を超え、多くの希望者が落選した。筆者もそのひとりだ。
それから3か月半が経ち、20年1月23日から2万人の2次募集が行われた。新規の応募も受け付けるが、1次の落選者は優先的に案内された。筆者の元にも23日午後、契約に必要なクーポンコードが書かれたメールが届いた。
2次募集と同時に、楽天オリジナルの新機種「Rakuten Mini」(2万1800円)も発売された。106.2×53.4×8.6ミリと小さく、ほぼカードサイズと言える。この機種はeSIM(エンベデッド=埋め込まれたSIM)で、契約情報はSIMカードではなく、機種そのものに記録される。差し換えられないデメリットはあるが、新し物好きの心はうずく。対象機種は10前後あるが、わき目も振らず即断した。
Rakuten Miniは、現状で6店舗での対面販売しか行われていない。25日午後に恵比寿店(東京都渋谷区)で契約。端末ともにTPU(熱可塑性ポリウレタン)製のケースと、液晶保護フィルム(各800円)も購入した。ほぼ純正として売られているが、価格設定は良心的だ。
iPhoneとの「2台持ち」で違和感ほぼゼロ
これまで筆者のメイン機種はiPhone 11。そのまま使えれば良いのだが、現時点で対象機種にはなっていない。Rakuten Miniを手に入れた当初は、LINEをはじめ、多用するアプリも移し替えてみたが、画面の小ささに難儀して以降は、テザリングを常時オンにして、「通話もできるモバイルルーター」として持ち歩いている。それから約3週間、メインとなるiPhoneと「2台持ち」で過ごしているが、いまのところ大きな問題はない。
当初懸念していたのは「つながりやすさ」だった。SNS上では「圏外だった」との先輩サポーターによるレビューがチラホラあったが、筆者の生活圏内では影響が少なかったようだ。通勤電車で数分間つながらないこともあるが、その時にはiPhoneのWi-Fiを切れば、別途契約している格安SIM(ドコモ回線)に切り替わる。しばらくしたら、Wi-Fiをつなぎ直せばいいので、そこまでストレスにはならない。
一方で、バッテリーの持ちには苦労する。約1250mAhと小さいため、モバイルルーター代わりに、1日中ポケットへ入れておくのは難しい。いつも夕方前にコンセントへつなぎ、帰宅後にまたコンセントへ。発売後の2月5日になって、購入特典として4000mAhのモバイルバッテリーが用意されたが、多少大きくなってもいいので内蔵してほしかった。
圏外でも「つながる」通話アプリ
楽天MNOが目玉として位置づけている「楽天Link」も試してみた。電話やSMSなどをひとつにまとめたサービスで、楽天回線ではなくて、他のWi-Fiにつないでも音声通話できるのが特徴となっている。基地局が十分とは言えない現状では、圏外でも「つながる」のは強みだ。一部地域以外ではKDDI回線をローミング利用できるが、自宅に据え置いたWi-Fiからでも通話できるとなれば、大きな売りになるだろう。
数度通話を試してみたが、音質としては問題ない印象を受けた。一方で、操作感にはまだ難がある。標準搭載されている電話アプリと、楽天Linkアプリとの「使い分け」が難しく、これらが統合されると利便性はかなり高まるはずだ。
楽天の三木谷浩史社長は2月13日、MNOの料金プランを3月3日に公表すると発表した。「わかりやすい料金」にするというが、その詳細はまだベールに包まれている。正式サービスインで人数制限が外れ、インパクトある価格を打ち出せば、回線に負荷がかかり、システム障害につながることもあるだろう。いつまでも「お試し期間」ではいられない。
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)