みさき公園消滅で宙に浮く「旧車両」 保存の難しさ、東西で相次ぎ浮き彫りに

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   大阪・泉南と東京・渋谷という東西の離れた土地で、引退した大手私鉄の名物車両の行く末が揺れている。

   保存していた施設の閉鎖や再開発により、これまでの場所を離れることが決まっているためだ。

  • 「みさき公園」で先頭車の一部が保存されていた南海7000系
    「みさき公園」で先頭車の一部が保存されていた南海7000系
  • 渋谷駅前の東急旧5000系
    渋谷駅前の東急旧5000系
  • 「みさき公園」で先頭車の一部が保存されていた南海7000系
  • 渋谷駅前の東急旧5000系

「みさき公園」の閉園と共に宙に浮く

   大阪府泉南郡岬町にある遊園地「みさき公園」は南海電鉄が運営する遊園地だが、2020年3月31日での閉園決定が2月13日に報じられた。園内には「わくわく電車らんど」があり、南海電鉄で走っていた7000系電車と10000系電車の先頭部分、特急「ラピート」50000系の模型シミュレーターが保存されていた。7000系は南海本線の主力として活躍した車両で、グリーンとグレーの旧塗装と、グレーの地にブルーとオレンジのラインが入った現行塗装の2両を保存展示していた。

   しかし同園の閉園に伴いこのわくわく電車らんども閉鎖される。閉園が正式に決まると、南海電鉄のファンを中心に車両の行く末を心配する声が出始めた。南海電鉄はこのみさき公園以外に、車両の保存施設を持っていない。

   園内で飼育していた動物は和歌山県白浜市のアドベンチャーワールドが引き取ると、アドベンチャーワールドのツイッターアカウントがツイートしていたが、鉄道車両の今後については不明だった。2月14日にJ-CASTニュースは南海電鉄に車両の行方に関して取材したが、全くの未定という回答だった。

東急の「アオガエル」が秋田へ

   一方、東京・渋谷駅のハチ公口には2006年から、東急電鉄で活躍した旧5000系電車「5001号」が鎮座している。この車両は1954年に登場し、当時としては斬新な緑色のカラーリングと丸みを帯びた車体デザイン、当時の最新技術だった「直角カルダン駆動方式」の採用といった話題に富み、「アオガエル」の通称が付けられて東急の歴代車両の中でも知名度が高かった。

   1986年に長野県の上田交通(現:上田電鉄)に譲渡され、1993年に引退後東急が保存していたが、2006年に東急から渋谷区が引き取った上で、渋谷駅前にモニュメントとして設置されることになった。ところが、床下の台車や機器を切り離し、車体も短くカットしたために、車両の原型を損なうとして鉄道ファンから疑問も上がった。

   以後、イベントスペースとしてたびたび室内を改装されながら渋谷駅前の名物のひとつに定着していたが、20年2月9日に渋谷区と秋田県大館市で締結された「青ガエルプロジェクト」が報じられ、忠犬「ハチ」の生まれ故郷の大館市に移設されることが決まった。渋谷駅前に置かれるのは20年5月までで、7月からは大館市内の交流施設「秋田犬の里」の芝生広場で展示が始まる。

   ハチ公の故郷という縁があるにせよ、東急沿線の渋谷での保存ならまだしも、なぜ秋田へ?との疑問が車両の歴史を知るファンから上がり、また渋谷駅周辺で進行中の大規模再開発と関連付けて「再開発で車両を置く場所がなくなっため、地方に引き取られた」というネガティブな憶測すら出回っている。

   鉄道車両を保存するか否かは、現状事業者の裁量次第という状況で、廃車時に解体を免れてもこのように少しでも周辺事情が変われば行方は不透明になる。恒久的な博物館を持っている大手数社以外では、名車両をちゃんと後世に残してほしい、という鉄道ファンの期待の実現は難しいようである。

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