賃上げ「脱一律」に呼応する動き
労働側の中でも、自動車総連は、2019年からベアの水準を示すのを取りやめたのを今回も踏襲、中でも、日本一の利益を上げているトヨタの労組は今春闘で、ベアの額が各組合員の人事評価に応じて従来より差がつく制度を提案し、ベアがゼロになる社員が出るのも容認するなど、経営側の「脱一律」に呼応する動きがある。電機連合も春闘の方針で、前年と同じ「月額3000円以上」のベアを統一要求とする一方、条件付きで各社の回答にばらつきが生じることを初めて容認するなど、春闘の代名詞だった「同額要求・同額回答」の図式が崩れ、賃上げの多様化が広がる流れが広がる気配だ。
これについて連合の本部は、経団連の方針が国際競争の最前線にいる大企業の意向ばかりを反映しているとして、「我々の問題意識は日本型雇用システムの良い部分をいかに取り戻すかだ」(神津会長)と反論。セーフティーネットとして機能してきた終身雇用に基づく長期雇用の行き過ぎた改革に慎重な姿勢で、中小企業や非正規労働者などの待遇改善による格差是正の必要を訴える。
景気動向もにらんで、厳しい労使交渉が続く。