ボクシングのWBA世界バンタム級王座決定戦が2020年2月8日(日本時間9日)、米ペンシルベニア州で行われ、元WBA、WBO世界スーパーバンタム級王者ギジェルモ・リゴンドー(39)=キューバ=が、元WBA世界スーパーフライ級王者リボリオ・ソリス(37)=ベネズエラ=を2-1の判定で下し2階級制覇を達成した。リゴンドーが正規王座獲得したことで、WBA世界バンタム級スーパー王者・井上尚弥(26)=大橋=との王座統一戦の可能性が出てきた。
ドネアに引けを取らないレジェンド
リゴンドーVSソリス戦は、序盤からブーイングが飛び交う派手さにかけた一戦となった。パンチが当たらない距離を保ち、時折、いきなりの左フック、ストレート、アッパーで相手の出鼻をくじく。39歳となったリゴンドーの「老獪」さは相変わらずで、決して危険を冒さない。7回に左アッパーからの連打でダウンを奪うも無理に倒しにいかず勝負は判定へ。採点は2-1に割れたものの、リゴンドーが「負けないボクシング」で勝ち切った。
井上を中心に動いている世界のバンタム級は、現在、井上がWBAスーパー、IBFの2つの王座を保持している。4月25日(日本時間26日)にWBO世界バンタム級王者ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)と王座統一戦に臨み、これに勝利すれば3団体統一王者となる。一方で、リゴンドーがWBAのレギュラー王座に就いたことで、井上、カシメロ以外にバンタム級には2人の王者が存在することになる。
主要4団体の王座統一を目指す井上は、カシメロのWBO王座を獲得し、その次はWBCもしくはIBFの指名試合が予想される。バンタム級では世界の「モンスター」を巡る争奪戦の様相を呈しており、リゴンドーも井上との対戦を熱望する王者のひとりで、階級を1階級下げて井上と同じ土俵に立った。衰えが見え始めたとはいえ実績でいえばドネアと引けを取らない軽量級のレジェンドだ。
「井上選手が苦戦するとすれば...」
将来的に対戦の可能性を秘める井上とリゴンドー。両者の対戦が実現した場合、2人の相性、勝敗の行方はどうなるのだろうか。J-CASTニュース編集部は、プロモーターとして2014年12月にリゴンドーを日本に招へいし、WBA、WBO世界スーパーバンタム級タイトル戦(挑戦者・天笠尚=山上=)を手掛けた実績を持つ協栄ジムの金平桂一郎会長(54)に話を聞いた。
金平会長は「井上選手が苦戦するとすれば、それはリゴンドー選手でしょう」と話し、その理由を次のように語った。
「リゴンドー選手が衰えているのは間違いないですが、一発のパンチ力はまだ健在です。たまに振ってくるあの一発が怖い。天笠選手との一戦で見せたように決して打たれ強くはありません。ただ、倒された後は絶対に打たせない。天笠選手は試合後に『リゴンドー選手のパンチは強くて堅い』と言っていたのが印象的でした。そして目が良く、ガードも堅い。間合いも独特で、やりづらいサウスポーです。井上選手のパンチが当たれば確実に倒れると思いますが、そう簡単にパンチを当てさせてくれるかどうか」(金平会長)
「逆にいえばリゴンドー選手を倒せるのは...」
リゴンドーは2014年12月のタイトル戦で7回に2度のダウンを奪われながらも、10回にダウンを奪い返し、11回終了TKO勝利を収めた。この試合はリゴンドーのパンチにより天笠の顔面が腫れあがったため、11回終了後に天笠サイドが棄権を申し出たもので、天笠は「左頬骨折の疑い」で試合後に病院に直行。対照的に2度のダウンを喫したリゴンドーの顔面はきれいなままで、防御技術の違いをまざまざと見せつけられた。
プロモーターとして約2週間、日本に滞在したリゴンドーをサポートしたという金平会長は、「私が成田空港に迎えに行った時、リゴンドー選手の体が意外に小さいと感じました。それが初練習でリングに上がったリゴンドー選手の体を見ると、とても大きく何かオーラのようなものを感じました。食事はいつもステーキで、減量の心配はなかったと思います」と話した。
五輪2大会連続金メダリストで、プロキャリアは20勝(13KO)1敗1ノーコンテスト。唯一の黒星は、2017年12月に2階級上のスーパーフェザー級王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に挑んだ一戦のみで、スーパーバンタム級ではいまだ負けなしだ。金平会長は「井上選手がリゴンドー選手に苦戦する可能性を指摘しましたが、逆にいえばリゴンドー選手を倒せるのは井上選手しかいないということ。ぜひ日本で開催してほしい一戦です」と話した。