最近、首都圏の電車に乗っていると録音ではない、肉声での外国語の放送を聞く機会が増えてきた。乗務員が肉声で、外国人向けに駅名や乗り換え路線の案内をしている光景に遭遇する。東京五輪を意識しているとみられるが、鉄道各社の取り組みを調べてみた。
東京メトロでは19年2月から
記者は東京メトロをよく利用するが、2019年の後半から日本語・英語の録音自動放送の後で、乗務員による肉声の英語放送を時折聞くようになった。ただ時間帯も朝ラッシュ・平日のデータイムなどまちまちであるし、英語ではなく中国語の肉声放送も数回聞いたことがある。
東京メトロではどのような取り組みを進めているのか。J-CASTニュースは、現業社員による外国語案内について、2020年1月下旬に取材を行った。回答によれば、19年2月12日より順次、英語の肉声放送を行っていた。全ての列車で行われるわけではないが、段階的に肉声放送を拡充してきたとのことである。
放送内容は行先案内や列車間隔調整の放送などを案内しており、またダイヤ乱れなどの異常発生時にも適宜情報をアナウンスしていると答えた。ただ、駅間距離が短い区間などがあるため自動放送の後に肉声アナウンスが難しい場合もあり「可能な限り」の案内にとどまっている。
習得方法は、英語の放送文例集を作成しての定期教育、出勤点呼時の読み上げ教育・社員の多言語対応検討委員による発声練習により、社員の語学力を図っている。アメリカ人などネイティブの英語話者に近いカタカナ表記を文例集に加えることで、より流暢な発音も習得できることを試みている。
これらのサービスの導入理由は、やはり東京五輪に向けてのインバウンド向けサービスの充実、ならびに輸送障害発生時に乗客に安心感を与え、混乱や事故の防止、安全確保を目的にしていると東京メトロは答えている。
一方、中国語のアナウンスについては、東京メトロが社として推進しているわけではないが、「乗務員が自主的に行っている可能性があります」と答えた。一部の積極的な社員が、英語以外の外国語での案内も習得して進めていると思われる。
地上の大手私鉄の取り組み
他の大手民鉄の取り組みはどうか。味の素スタジアム(東京都調布市)が沿線にあり、昨年はラグビーワールドカップで観客輸送に従事した京王電鉄と、観光地・秩父(埼玉県)を抱え、中国人人口の多い豊島区池袋をターミナルとする西武鉄道に取材を行った。
京王電鉄の場合、外国語のアナウンスは自動放送か、タブレット端末に登録した音声による放送を基本としている。その他にも語学力に自信のある乗務員が、肉声で沿線情報などをアナウンスしているという回答だった。ラグビーW杯に備えて、タブレットに登録の音声バリエーションも増やしていたとのこと。これらは通勤ラッシュそして土休日の行楽時間帯に実施しているという。
西武鉄道は18年12月から肉声放送を行っていた。きっかけは同年の台風24号接近の際の計画運休で、「インバウンドに対する『おもてなし』の意識の向上、異常時英語放送実施の訓練を目的としております」と答えている。通常時は自動放送で間に合っていても、異常発生時に外国人にも適切な案内ができることを狙っている様子だ。既に駅名標・車内標・発車標など視覚面での多言語表記が進んでいるが、五輪に向け聴覚面でもフレキシブルなサービスが整備されつつある。