今月(2020年2月)に入って、キャッシュレス決済各社のキャンペーン攻勢が始まった。
よく「ニッパチ」と言われるように、2月と8月は消費が落ち込むとされている。そんななか、あえてこの時期にポイント還元を行う理由を探る。
au PAYは「毎週10億円」、d払いは「コンビニ還元」
2月のキャンペーンで目立つのが、au PAY(KDDI系)の「誰でも!毎週10億円!もらえるキャンペーン」。最大20%をポイント還元するもので、2月10日~3月29日にかけて、最大7万円分の付与を受けられる。キャンペーン名からわかるように、毎週10億円に達し次第終了で、単純計算で70億円規模になる。他のコード決済では一般的な「決済ごとの上限金額」は定められていないのが特徴だ。
PayPay(ソフトバンク系)は、一部飲食店で40%還元キャンペーンを2月29日まで行っている。対象店舗は、牛丼チェーン(吉野家、松屋、すき家)をはじめとする8社で、日本コカ・コーラの「Coke ON」自販機も対象になるのが面白い。
d払い(NTTドコモ系)は2月16日まで、主要コンビニでの利用で10%相当を還元する。これだけだとインパクトは薄いが、ドコモはdポイントカードとの「合わせ技」で勝負。別途20%のポイント還元をローソン(通常1%、16日まで)とファミリーマート(通常0.5%、17日まで)で同時開催している。
この3社に共通するのは、携帯電話会社を母体とするコード決済サービスであること。とくにau PAYは、これまで大規模なキャンペーンを打ってこなかった。ではなぜ、「毎週10億円」を行う必要があったのだろうか。
間口の広さを打ち出す背景
ひとつ考えられるのは、イメージチェンジだ。「d払い」も「au PAY」も、他社スマホのユーザーでも使用できるが、あまり知られていない現状がある。理由としては、サービス名に加えて、プロモーションの仕方もありそうだ。いずれのテレビCMも、これまで携帯の料金プランを紹介してきた、おなじみのキャラクターが登場し、それらと同じ世界観で描かれている。
その点、PayPayは名前からソフトバンクやワイモバイル(Y!mobile)を連想しないし、テレビCMに白戸家の「お父さん犬」も出てこない。加えて、サービス開始当初の「100億円キャンペーン」のインパクトもあって、独立したイメージを持つユーザーは多いだろう。
今回のキャンペーンでは、PayPayも「全てのスマホユーザーが最大40%還元」と、間口の広さを前面に出している。実はソフトバンク・ワイモバイルのスマホユーザー、もしくはYahoo!プレミアム会員であれば、これが「最大50%還元」になる。本来はインパクトの大きい方を出したいものだろうが、あえて「40%」を打ち出すことで、特定の携帯会社のイメージを薄められる。
いまは動きやすいタイミング?
そこで気になるのが、このタイミングで施策を打つ理由だ。あくまで筆者の推測ではあるが、携帯各社にとって、いまが一番「動ける」のではないか。高市早苗総務相の就任(19年9月)に前後して、各社は端末料金と利用料金を分ける「分離プラン」の厳格化や、SIMロックの解除要件緩和などを余儀なくされてきた。
その後、新料金プランが出そろい、12月からの「学割」もひと段落した。しかし、20年3月からは再び「学割」に力を入れる一方で、4月本格スタート予定の楽天モバイル(独自回線)への対抗措置もアピールする必要がある。タイミングとしては今しかない――。こういった考えてもおかしくはない。
いずれにせよ、携帯各社にとっては、これまで本業ではなかった各サービス。キャッシュレス市場の拡大にともない、KDDIはローソンと、ドコモはメルカリ(メルペイ)と、それぞれ提携を発表した。単なる自社ユーザー向けの「おまけ」から脱却すべく、ようやく重い腰を上げた形だ。
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)