新型コロナ「検証情報」まとめ読み ファクトチェック団体がサイト開設

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   新型コロナウイルスによる肺炎をめぐる根拠不明の情報が世界中で拡散するなか、その検証結果を一覧できるウェブサイトがお目見えした。

   ファクトチェックを支援する国内団体「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」が2020年2月3日に立ち上げた。ファクトチェックの専門機関「国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)」が2020年1月下旬、検証作業を世界中のファクトチェック機関が協力して行うことを呼びかけたことを受けた動きで、FIJでは「誤情報に振り回されたり加担したりせず、落ち着いて情報を見極めるのに少しでも役に立てれば」としている。

  • 新型コロナウイルスの検証記事を一覧できる特設サイト。ファクトチェックを支援する国内団体「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」が立ち上げた
    新型コロナウイルスの検証記事を一覧できる特設サイト。ファクトチェックを支援する国内団体「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」が立ち上げた
  • 新型コロナウイルスの検証記事を一覧できる特設サイト。ファクトチェックを支援する国内団体「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」が立ち上げた

沖縄、徳島、高知、静岡、青森、滋賀で検証された「感染者情報」

   サイトでは、「感染の予防・治療法に関するもの」「感染者の発生・死者に関するもの」と、それ以外の3分野について検証記事を掲載している。FIJのガイドラインでは、(1)対象言説の特定(2)対象言説の真実性・正確性の判定(3)判定の理由や根拠情報、の3要素を含む記事を「ファクトチェック記事」と定義しているが、この「ファクトチェック記事」にあたらなくても、真偽不明な情報を検証した記事であれば広く収録している。

   例えば「感染者の発生・死者に関するもの」では、

「(沖縄)県内のフォスターの海兵隊さんでコロナウイルスが出た」

といった情報がフェイスブックで拡散したのに対して、地元紙の沖縄タイムスが

「在沖海兵隊は沖縄タイムスの取材に『現在、沖縄の海兵隊員にはコロナウイルスの疑いのある症例はない』と否定。県地域保健課の担当者も『基地内で発生したとの情報はない』」(2月6日時点)

と報道したことを紹介している。沖縄以外にも徳島、高知、静岡、青森、滋賀でも感染者情報が流れたが、現時点では事実ではないことを報じる記事が一覧できるようになっている。

   「感染症の予防・治療法に関するもの」では、「ウイルスはアルコールでは消毒出来ないというのが通説です」という情報がツイッター上で拡散しているのに対して、J-CASTニュースが「新型コロナ予防に『「アルコール消毒は効果がない」は誤った情報』 厚労省が注意呼びかけ」と出した検証記事を配信したことを紹介している。

「コロナウイルスでパニック」→本当は「春節を祝うために地元へ戻ったときの様子」

   現時点で、IFCNは約300件の検証記事をデータベース化して共有している。こういった海外の事例も翻訳して紹介している。例えばインドネシアでは「コロナウイルスでパニックになる中国人の動画」だとされるものが拡散したが、ニュースサイト「テンポ」のファクトチェック記事では「このビデオは広東省で働いている玉林市の住民が、春節を祝うために地元へ戻ったときの様子である」と指摘。「コロナウイルスでパニック」だというのは「誤り」だと結論付けている。

   FIJの楊井人文(やない・ひとふみ)事務局長は、サイト開設の狙いを

「新型コロナウイルスに関しては未知のことが多く、海外の真偽不明情報が日本語にネット上で広がったり、過度な不安や恐怖感から差別も起こりやすい状況が生まれている」
「現時点で、どのような誤情報が確認されたか、どこまで情報が検証され、まだされていないのかを一目で確認できるサイトがあれば便利と考えた」

などと説明する。そこで、「疑義言説」と呼ばれる未検証の情報も「あやしい情報 要注意リスト」と、分かりやすい表現に改めて紹介している。「新型コロナウイルスはエイズ薬が効く」「コロナウィルスは次亜塩素酸水を吹き付けると10秒で死滅する」といった内容で、検証に役立つ情報を募っている。

結論だけではなく、根拠も確認して自ら真偽を見極めて

   楊井氏によると、ファクトチェックは「人々に代わって、疑わしい情報に対して信頼できる根拠・証拠に基づいているかどうかを丹念に調べ、事実かどうかを確認し、その結果をシェア」することだ。一連の検証記事には、どういった証拠や根拠に基づいて「誤情報」「デマ」といった結論に至ったかも説明されており、楊井氏は

「ファクトチェックの結論だけを見るのではなく、ファクトチェックが明らかにした根拠情報を確認して、自ら真偽を見極めていただきたいのです。その根拠情報が不十分だと思われたら、そのファクトチェックの結論を受け入れる必要はありません」

と訴えている。

   その「自ら真偽を見極める」判断基準を自らのウェブサイトで提唱しているのが、メディアリテラシー教育に詳しい白鴎大学特任教授の下村健一さんだ。下村さんは、「新型コロナのデマ・ウイルスには『ソ・ウ・カ・ナ』が効く!」と題して、(1)「まだわからないよね?」......[ソ]ク断するな(2)「報告かな、意見・印象かな?」......[ウ]呑みするな(3)「他の見え方もないかな?」......[カ]タよるな(4)「隠れてるものはないかな?」......[ナ]カだけ見るな、の4つの留意点を紹介している。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

姉妹サイト