消費者金融大手、アコムの株価が1月22日に一時、前日終値比2.1%(11円)高の524円まで上昇、2017年6月(540円)以来、約2年7カ月ぶりの高値をつけた。その後も上昇を続け、1月末には530円台にまで達している。
顧客から受け取り過ぎた利息を返金する「過払い金返還」が一段落し、業績改善が進むと期待する投資家の買いが入っている。その後は新型肺炎の影響で全体の株価が下がり、アコムも下げているが、520円台を回復しており、昨年来の上昇基調は変わらないと見る向きもある。
メガバンクの後ろ盾で窮地脱する
「過払い金」とは、司法書士や弁護士の事務所の広告で「あなたのお金が戻ってきます」などと謳われているものだ。かつて利息制限法の上限(15%~20%)を超えているが、出資法の上限(29.2%)を超えていない金利が「グレーゾーン金利」と言われ、アコムや武富士のような消費者金融大手がグレーゾーン金利での貸し出しを積極的に行っていた。民事上(利息制限法)は無効ながら刑事罰(出資法)の対象にはならないためグレーなのだった。
しかし、2000年代前半から半ば、ヤミ金融を含めた多重債務の果てに自殺に追い込まれる人が出て社会問題となり、グレーゾーン金利こそ悪者だと批判の対象となった。そうした背景のもとで2006年1月、最高裁はグレーゾーン金利について、業者側に返還を求める判決を出した。利息制限法の上限を超える金利は無効なのでその利息(過払い金)を払っていたなら戻ってくる――そのことがお墨付きとなったわけだ。
当然ながら消費者金融業界にとっては経営を揺るがすことになる。実際、最大手の武富士は2010年に経営破綻し、東京地裁に会社更生法適用を申請した。アコムの場合、最高裁判決の前の2004年に三菱東京フィナンシャル・グループ(当時、現三菱UFJフィナンシャル・グループ=MUFG)と資本提携していたことで窮地を救われた。提携当初は持ち分法適用会社だったが、現在では40.18%出資の連結子会社として強固な関係にある。
同業他社も上昇傾向
トップメガバンクの後ろ盾のもとで過払い金への対応を進めてきたなか、ようやくその返還が一巡したとの見方が投資家の間に広がっている。過払い金返還請求の高止まりで2017年3月期に6期ぶりに連結純損益が赤字(721億円)に転落したものの、2018年3月期は過払い金返還損失が減少して黒字(705億円)に転換。2019年3月期は純利益が377億円と大幅減益だったが、2020年3月期は755億円と大幅増益を見込んでいる。
アコムが1月30日に発表した2019年4~12月期連結決算は、純利益が前年同期比11.9%増の647億円と好調だ。通期で見込む755億円に対する進捗率は85.7%。野村証券は1月31日配信のリポートでこの進捗状況を踏まえて野村としての利益予想を上方修正し、目標株価を480円から500円に引き上げた。野村は「信用保証事業の貸し倒れ損失率が改善している」ことも評価している。
アコムだけでなく、消費者金融・信販各社の業績は改善しており、株価は上昇している。なかでもMUFGの一員として安定感のあるアコムは当面、株価は上値を追う可能性がありそうだ。