過去には観客が「やり直し」「賠償」求め訴訟
ライブでのマナーをめぐっては、2017年に興味深い判例がある。ローカルアイドルのライブ会場でオタ芸に妨害されて楽曲が聴こえなかったとして、観客の男性が主催者にライブのやり直しや約100万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。原告の男性は、主催者がオタ芸を行う観客を退場させず、楽曲の鑑賞を妨げたのは「債務不履行」にあたると主張したが、大阪地裁での一審から最高裁まですべて原告の主張は棄却された。
大阪高裁判決を見ると、ライブの主催者は「本件コンサートにおける楽曲等の鑑賞に適する環境を維持し,これを害する要因があれば,その除去に向けて適切に対処する一般的な義務を負うものと解される」ものの、観客の態度は様々で「オタ芸一般を迷惑行為として強く非難する意見もあること、その反面、観客によるかけ声は、コンサートの雰囲気を高揚させる側面もある」と認めている。
さらに「本件コンサートにおいて、観客がかけ声を出すことを禁止する方針は採っていなかった」ことなどから、主催者は原告に対し「本件コンサート契約において負担する債務として、オタ芸をする者を必ず退場させることを明示的に約束したとは認められない」としている。
取材結果を踏まえると、この判例では禁止事項に「オタ芸」が明記されていなかったために、オタ芸の行為者を退場させられるか否かが争点となったが、前述のように「イェッタイガー」「家虎」を禁止・退場行為に明記していれば、主催者は行為者を退場処分にできる正当な理由と義務が生じる可能性がある。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)