「カエルならよかったんですかね」――2020年1月31日の記者会見でこう述べたのは、立憲民主党の枝野幸男代表だ。
衆院予算委員会の棚橋泰文委員長(自民)は、枝野氏に政権の「ポチ」と非難されたことへの謝罪と発言の撤回を求めているが、枝野氏は謝罪や撤回には応じなかった。
「カエル」という発言は、棚橋氏が以前、旧民主党を「恐竜どころか両生類にまで戻った」と非難したことがあったためで、枝野氏は両生類を念頭に「カエル」と発言し、棚橋氏を再び挑発したものとみられる。
野党VS予算委委員長、異例の「場外乱闘」
補正予算に続き、来年度予算案の審議が続く国会で、立憲民主党の枝野代表と衆院予算委員会の棚橋委員長による「場外乱闘」に注目が集まっている。
始まりは1月28日の衆院予算委員会だった。本来、安倍晋三首相ら閣僚が答弁するはずの委員会の場で、なぜか野党と、公平中立な議事進行をすすめる「行司役」であるはずの予算委員長の激しいやりとりが展開された。
野党側は「桜を見る会」の招待者名簿について質問をしていたのだが、棚橋氏が、質問している野党議員に対し「長すぎて理解できない」と文句を述べたり、野党議員の質問に同意の拍手が湧くと「やめなさい」とヤジを注意するかのように静粛を求めたりした。
また、議事が混乱しても時計を止めないなど、野党の質問を妨げているとみられかねない議事進行を行い、批判が集まっていた。
枝野氏は1月28日の党会合で、棚橋氏による委員会の議事進行を「政権寄りの運営」と指摘した上で、「また入閣したいということで、安倍晋三首相に尻尾を振っているポチなのか!恥を知れ!」と語り、委員会運営の姿勢を改めるよう求めたのだ。
対する棚橋氏は「人を人とも思わぬ侮辱に憤りを感じる」と猛反発。自民党も立憲民主党に対し、撤回と謝罪を求めていたという経緯だ。
今後の態度が与野党攻防のカギに
では、棚橋氏はなぜ「政権寄り」と批判を受けるような委員会運営を行ったのか。永田町ではある見方が出ている。
棚橋氏は当選8回で2004年には科学技術相として入閣したが、その後、大臣ポストには就いていない。そのため、次の内閣改造で安倍氏に起用してもらおうと躍起になっているのではという見方だ。
自民党関係者からは「棚橋氏は自民党内でも『変わり者』で通っている。今度は重要閣僚をやりたいから、予算委員長として、総理の目の前でいいところを見せようとしたのだろう」という声まで挙がっている。
今年度補正予算がすでに成立し、衆議院の予算委員会では、来年度予算案の審議と、注目の質疑が続く。棚橋氏は今後の委員会運営について「公平公正に対応したい」と述べているが、棚橋委員長の委員会運営が変わるのかどうかが、与野党の攻防の一つのカギとなるといえそうだ。