トヨタ自動車は国内初代スープラ(A70型)と2代目スープラ(A80型)の補給部品を復刻・再生産し、純正部品として市販する。日本だけでなく、北米や欧州など世界中のスープラファンに向け、廃版となった部品を供給するという。
トヨタが旧車のレストア(修復)サービスに乗り出すインパクトは大きく、まだサービスを行っていないSUBARU(スバル)など他メーカーを刺激する可能性もある。
マツダやホンダ、日産に続いて...
生産終了となった人気モデルの部品を自動車メーカーが復刻する動きは、マツダが2017年12月、初代ロードスターのレストアサービスを開始したのに続き、ホンダがビート、日産がスカイラインGT-Rなどで行っている。トップメーカーのトヨタもレストアサービスに参入することで、好きなクルマを長く楽しむ欧米発祥の自動車文化が日本にも根付くか注目される。
トヨタが純正部品を復刻するA70型は1986年に登場。前身のセリカXXのフルモデルチェンジを機に、XXが海外で使っていたスープラの名を冠して登場した。
A70型は日本で初めてツインターボを導入した2リッターエンジンを搭載。トップグレードの3.0GTターボは「TOYOTA 3000GT」というキャッチコピーを掲げ、かつてのトヨタ2000GTにイメージを重ね合わせた。
A80型は1993年に登場し、2002年まで生産が続いた。ツインターボ仕様には、日本車で初の6MTモデルが誕生。それまでスポーツカーでも5速までだった日本車のマニュアルミッションを、今日では定番の6速に格上げする立役者となった。
スープラはトヨタにとって、いつの時代も頂点に位置するフラッグシップであることに変わりない。トヨタが2019年5月、独BMWと組み、17年ぶりにスープラを復活させたのも、往年のスープラファンが世界中にいるからだ。歴代のスープラは直列6気筒エンジンとFR(後輪駆動車)をヘリテージにしており、現行モデルもこの伝統をきちんと踏襲している。
「愛車に必要なパーツ」リクエストも募集
トヨタが17年ぶりにスープラを復活させただけでなく、廃版となった先代モデルの部品をわざわざ復刻するのは、今後もスープラを世界で愛されるスポーツカーとして育てるという意思表示だろう。トヨタは今回の復刻について「『思い出の詰まった愛車に乗り続けたい』というお客様の想いに応えたい。廃版となった部品の復刻は容易ではないが、多くの部品の復刻をめざしたい」と話している。
復刻する部品は、プロペラシャフト、ブレーキブースター、ウェザーストリップなどで、2020年春ごろから準備が整いしだい、ウェブサイトで公開するという。
トヨタはどんな部品を復刻してほしいか、オンラインでリクエストの受け付けも始めた。トヨタは「あなたの愛車がこれからも走り続けるために必要としているパーツを教えてほしい。あなたの声が次の復刻パーツを生み出す原動力になる」とアナウンスしている。これが本当なら、スープラオーナーにとってはまたとない朗報に違いない。
ただ、旧車オーナーが気になるのは部品の価格だ。初代ロードスターなど旧車を維持するのに、新車1台を買うのと同じくらいのコストがかかるのは珍しくない。自動車文化を育てる意識の高いトヨタであれば、ぜひリーズナブルな価格での部品供給を期待したい。
日本メーカーでは、スバルや三菱自動車などが、まだ部品の復刻サービスを行っていない。スバルにはレガシィやWRX、三菱にはランサーエボリューションなどがあり、潜在需要はあるはずだ。ぜひ残るメーカーもマツダやトヨタなど先発メーカーに続き、ファンの期待に応えてほしい。