東京・秋葉原のバーガーキングが、話題の「縦読み」垂れ幕を差し替えた?――こんな情報が、ネット上で拡散している。
元々の「煽り」調のメッセージから、「わすれないよ」という暖かな縦読みになっていた、というのだが、実はこれは、ある一般ユーザーが作成したコラージュ画像だった。画像の作者は反省するとともに、思わぬ拡散ぶりに困惑している。
大手まとめサイトでも拡散
「秋葉原のバーガーキングさん、マックへの『縦読み』ポスターを差し替えてしまうwwwww」――大手まとめサイトとして知られる「オレ的ゲーム速報@JIN」では2020年2月2日、こうしたタイトルの記事が掲載された。
元ネタとなったのは、あるユーザーが投稿したツイートだ。バーガーキング秋葉原昭和通り店(東京都千代田区)の店頭にあった「縦読み」が差し替えられていたとして、オリジナルの垂れ幕写真とともに、差し替え後とされる画像を掲載している。そのメッセージは、
「わたしたちは隣同士し互いに切磋琢磨
することで、よきライバル、よき仲間として闘ってきました。その
れきしに幕が下りるということは、わたしたちにとっても大変
な悲しみであります。あなたが変わらずに隣にいてくれたから、
いままで頑張ってこられました!22年間スマイルをありがとう!
よき友の健闘をたたえ、わたしたちは明日からまた頑張っていきます」
というものだ。
文面自体も暖かなものだが、各行の1文字目を縦に上から読むと、「わすれないよ」――。
「私たちの勝チ」で騒然となったが...
そもそも事の起こりは、マクドナルド秋葉原昭和通り店が1月31日に閉店するにあたり、近所の「ライバル店」であるバーガーキング側が、「22年間たくさんのハッピーをありがとう」という垂れ幕を店頭に掲示したことだ。
この文章は、一見するとマクドナルド側を「良きライバル」とたたえつつ、「お疲れさまでした」といたわるものなのだが、実は「縦読み」すると、「私たちの勝チ」になるという、ユニークなものだった。ネットを起点に注目を集め、テレビ番組などでも取り上げられるなど大きな話題に。ちなみにバーガーキング側は、
「ポスターを見て、何を感じられるか、どのようなご意見をもたれるかは、お客様次第だと考えております。
また、お客様がご自身の意見をどのような方法で他人に伝えられるか、あるいは世の中に発信されるかも、お客様次第だと考えております」
として、縦読みについては肯定も否定もしていない(Jタウンネット1月31日記事「閉店するマックへ『私たちの勝チ』 ネット騒然『恐怖の縦読み』の真相、バーガーキングに聞くと...」より)。
それが一転して、「わすれないよ」という感謝の言葉に。この画像も大きな反響を呼んだ一方で、「取り下げるなら最初からすんなや」など、批判を受けてバーガーキング側が「日和った」のではないか、というような声も上がった。
「軽率なことをして申し訳なく思っております」
ところが、前述のJタウンネットの記事などでは、バーガーキング側は垂れ幕は1月31日いっぱいで片づける、と説明していた。また、拡散する画像をよく見ると、質感などが微妙に不自然だ。
実は、この「差し替え版」とされるものは31日深夜~1日未明にかけ複数ツイートされているが、その写真を見ると件のメッセージは、垂れ幕ではなく、画像を印刷した紙を、店頭に張り付ける形で掲載されていることがわかる。さらに調べると、この張り紙は店側ではなく、ある一個人が作成し、「勝手に」掲示したものだということがわかった。
「お騒がせしたことと、これによってご迷惑をかけてしまった方々には、軽率なことをして申し訳なく思っております。ただただあのマックで働いている人に届けばいいと思ってやったことでした。ごめんなさい」
そう謝罪するのは、ツイッターユーザーの「STAFF.B ワラウズ 撃掘神社」(@rev_staff)さんだ(以下、STAFF.Bさん)。J-CASTニュースがダイレクトメッセージで話を聞くと、事のあらましを説明してくれた。
長く秋葉原で働いているというSTAFF.Bさんは、今回閉店したマックには、特に学生時代にはよく通っていた「ヘビーユーザー」だったという。「ベテランと思われるおばちゃん達(行っている人は絶対知っているもはやおばあちゃん)から日本語のたどたどしい愛すべき外国人アルバイターさん」など馴染みの店員さんも多く、今回の閉店には大きな感慨があった。
「大好きなマックに最後のメッセージ」伝えたかった
そんな中、話題のバーガーキングの垂れ幕を見て、心を打たれた。自分でも「大好きなマックに最後のメッセージ」を届けたいと思い、垂れ幕の写真を加工して上記の「わすれないよ」の画像を作成する。
31日夜、現地を訪ねるが、閉店作業に勤しむマックの店員には渡す勇気が出せず。そこで、すでに垂れ幕が撤去されていたバーガーキングの店頭に、件の画像を印刷した紙を張ったのだという。
張り紙はやがて片づけられたようだが、その間に、複数の人がこれを目撃し、ツイッターなどに投稿、これが見る見るうちに拡散されてしまった――これが、「差し替え説」の真相だった。
「誤解が生じていたりしてどうしようと思っていたところです...」と困惑するSTAFF.Bさん、悪気やいたずら、あるいはバーガーキングへの皮肉といった意図はなく、マックへの感謝を伝えたい一心だったというが、今となっては「軽はずみ」だったと反省しているそうだ。