新型コロナウイルスによる肺炎が拡大するなか、真偽不明の情報やデマがネット上で多数飛び交っている。
若年層に人気の短尺動画アプリ「ティックトック(TikTok)」でも、「(新型コロナウイルスは)生物兵器」との陰謀論などが喧伝(けんでん)され、内容が精査されないまま拡散している。
運営する中国・バイトダンス社の日本法人は取材に対し、「正しい情報に基づいた投稿の確認を啓蒙できるような仕組みを検討しています」と答える。
「日本が伝えないコロナウイルスの真実」に約8万いいね
ティックトックは15秒間の動画を投稿できるアプリ。ツイッターやインスタグラムなどとともに人気のSNSで、総務省の19年の調査によれば10代の利用者が4割と突出して多い。
投稿動画はエンタメ系が中心のため、偽情報拡散の温床にはなりづらい印象を受けるが、ティックトックも例外ではない。情報収集の場としても活用されているためだ。ネット記事やテレビ番組を転載してキャッチーに紹介する動画が数多く投稿されている。
中国・武漢市を中心とした新型コロナウイルスの発生後、ハッシュタグ「#コロナウイルス」が付いた動画の総再生数は1900万回に上る(以下、数字は2020年1月31日現在)。
「日本が伝えないコロナウイルスの真実」とのテロップが付いた動画では、コロナウイルスは「明らかに生物兵器です」と断じ、「かかると死ぬ」「(治っても)体がボロボロになり、一生後遺症で苦しむ」と不安を煽っている。根拠不明の情報にもかかわらず、7万6800いいね、5600シェアを獲得する。
「武漢の看護師」を名乗る人物が、「(国内の)新型ウイルスの感染者は9万人」「(感染者1人あたり)14人に感染」と伝えた動画の一部も拡散している。
しかし、中国国家衛生健康委員会の31日の発表では、感染者数は9692人だ。英BBCは、この看護師が着用している防護服は湖北省の医療従事者が着ているものではないため、「彼女が看護師や医療補助員である可能性は低いとみられる」と報じている。