ボクシングの元世界3階級王者・亀田興毅氏と所属する個人事務所が日本ボクシングコミッション(JBC)などを相手に損害賠償を求めていた訴訟の判決が2020年1月31日、東京地裁で言い渡され、JBCらに総額4550万円の支払いなどが命じられた。
亀田興毅氏らは、JBCによる不当な処分で試合が出来なくなり損害を受けたとして損害賠償を求めた訴訟を起こしていた。
発端は「負けても王座保持問題」
事の発端は2013年にまで遡る。同年12月にWBA、IBF世界スーパーフライ級王座統一戦が行われ、IBF王者亀田大毅氏とWBA王者リオボス・ソリス(ベネズエラ)が対戦。前日計量でソリスが体重超過により失格となりWBA王座を失い王座は空位となった。試合に先立って行われた会見でIBFの立会人は、大毅氏が勝てば王座統一、負ければIBF王座が空位になると明かしていた。
試合は大毅氏が1-2で判定負け。事前の説明通り王座は空位になると思われたが、IBFの立会人が前日の見解を一転させ「負けても王座は保持された」と明言。JBCはこの事実を知らされておらず、一方の亀田ジムは前日のルールミーティングでIBFルールが配布され確認されていたとし、大毅氏が負けても王座を保持出来ることは事前にルールで決まっていたと主張した。
「負けても王座保持問題」は世間を巻き込んでの騒動となり、亀田家への批判が多く寄せられた。JBCはこの事態を重く受け止め、倫理委員会、資格審査委員会を経て2014年2月、亀田ジムの吉井慎次会長と嶋聡マネジャーのライセンスの更新を認めないことを発表。事実上、所属ジムを失った亀田3兄弟はボクサーライセンスを更新することが出来ず、国内で試合をする機会を失った。
「JBCの収入の9割は協会から得る収入」
今回、司法の判断ではJBCの処分を不当として損害賠償の支払いが命じられた。JBCが公式HPで公開している財務諸表によると、2018年末の正味財産は約620万円となっており、今回、4550万円の支払いを命じられたことにより、財務面から存続が危ぶまれる。JBCが破綻の危機にさらされ、興行を控えたボクシング関係者から不安の声が上がっており、その行方に注目が集まっている。
そもそもJBCはどのような団体なのか。JBCは1952年4月に設立された。当時、白井義男氏が日本で初めての世界タイトル戦を控えており、コミッションの必要性が出たことで設立されたという。JBCの主な業務は試合運営、ジムの管理、プロボクサーの健康管理や試合の認定、日本ランキングの認定などがあり、クラブオーナーや選手のプロライセンスの交付、更新なども行っている。
JBCの収入源は、日本各地のボクシングジムのオーナーが所属する日本プロボクシング協会から得るライセンス料と試合認定料が主なものだという。東日本ボクシング協会の理事を務めた経験を持つ協栄ジムの金平桂一郎会長(54)は「JBCの収入の9割は協会から得る収入です」と話す。また、金平会長によると、2010年にはJBCの正味財産は1億円以上あったという。
「最悪のケースは避けるよう努力していく」
プロボクシングの試合を管理するJBCが機能しなくなったら興行にどのような影響を及ぼすのか。前提として、JBCは試合を認定し、興行を許可する団体であり、JBCなしでは公式試合と認められない。また、ボクシングの興行は、出場選手はもちろんのことレフリー、審判、リングドクター、タイムキーパーらがそろって初めて成立し、これを管理しているのがJBCである。
2月には日本国内で7つの興行が予定されており、そのうち日本タイトル戦が2試合、東洋太平洋タイトル戦が1試合予定されている。東日本ボクシング協会の幹部は「JBCに関して現時点で何も言うことは出来ないが、選手のことを第一に考え、試合がなくなるという最悪のケースは避けるよう努力していく」と話した。