2020年1月30日から31日、関西で「昭和の鉄道」を連想させるモノが相次いで過去帳入りする。
近鉄の「字幕回転式発車標」と、大阪・阪堺電車恵美須町駅である。
絶滅寸前の「字幕式」発車標
近鉄長野線の河内長野駅(大阪府河内長野市)には、近鉄で唯一「字幕回転式発車標」が残っていた。
ホームから発車する列車の行先などを示す発車標は、今ではLED式が当たり前になっているが、幕を回転させて表示する「字幕式」や、板を回転させる「反転フラップ式」が昭和50年代頃までは広く使われており、河内長野駅のものは1976(昭和51)年に設置された。
その字幕式もLED式の普及で全国的に撤去が進み、2府3県(大阪・京都・奈良・三重・愛知)に広がる近鉄でも河内長野駅に残るだけになっていたが、1月30日の終電をもって使用を終え、31日からはLED式の発車標に置き換えられた。
近鉄では字幕回転式発車標を惜しむ人々のために同駅で記念台紙付きの入場券を発売し、記念ポスターも掲出した。乗車券は発売当日に完売し、この懐かしいアイテムを知るファンが潜在的にいることをうかがわせた。
南への移転で現行駅舎が消える
通天閣からもほど近い大阪・ミナミの阪堺電車恵美須町駅は、1月31日限りで南に移転するため、現行の駅は31日を最後に廃止される。1911年に開業し、堺方面に向かう路面電車・阪堺電車の起点駅のひとつだったが、109年の歴史を区切りをつけることになる。
「阪堺電車のりば 恵美須町駅」のレトロなフォントや、木製の柱、廃レールを活用した柱など現代の駅からかけはなれた風情で残っており、駅周辺の庶民的な雰囲気ともマッチしていた。読売新聞の記事によれば、施設は空襲や老朽化による改修をたびたび繰り返しつつも、開業当時からの基本構造を受け継いできたという(1月26日付大阪朝刊)。
しかし2018年の台風21号でホーム屋根を一部吹き飛ばされる被害に遭い、またバリアフリー対応のために約100メートル南に作られる新ホームに移転することとなった。
現恵美須町駅の移転・廃止が近づくと、この駅の雰囲気を惜しむ人がたくさん訪れ、駅の光景をカメラに収めるようになった。同社の大阪方のもう1つのターミナルの天王寺駅前駅と比較しても電車の本数も乗客もまばらだが、そのひなびた雰囲気もかえって魅力的に映るようだ。
多言語対応・バリアフリー化などニーズへの対応が進む一方、現役で残っていた鉄道の「遺産」は、新しい時代のものに置き換わっていく。