南への移転で現行駅舎が消える
通天閣からもほど近い大阪・ミナミの阪堺電車恵美須町駅は、1月31日限りで南に移転するため、現行の駅は31日を最後に廃止される。1911年に開業し、堺方面に向かう路面電車・阪堺電車の起点駅のひとつだったが、109年の歴史を区切りをつけることになる。
「阪堺電車のりば 恵美須町駅」のレトロなフォントや、木製の柱、廃レールを活用した柱など現代の駅からかけはなれた風情で残っており、駅周辺の庶民的な雰囲気ともマッチしていた。読売新聞の記事によれば、施設は空襲や老朽化による改修をたびたび繰り返しつつも、開業当時からの基本構造を受け継いできたという(1月26日付大阪朝刊)。
しかし2018年の台風21号でホーム屋根を一部吹き飛ばされる被害に遭い、またバリアフリー対応のために約100メートル南に作られる新ホームに移転することとなった。
現恵美須町駅の移転・廃止が近づくと、この駅の雰囲気を惜しむ人がたくさん訪れ、駅の光景をカメラに収めるようになった。同社の大阪方のもう1つのターミナルの天王寺駅前駅と比較しても電車の本数も乗客もまばらだが、そのひなびた雰囲気もかえって魅力的に映るようだ。
多言語対応・バリアフリー化などニーズへの対応が進む一方、現役で残っていた鉄道の「遺産」は、新しい時代のものに置き換わっていく。