東京電力廃炉資料館(福島県富岡町)が、2019年11月30日に開館から1年を迎えた。東京電力福島第一原子力発電所の事故の詳細と、現在進行形で行われている廃炉作業の実情を紹介する施設だ。二度と事故を起こさないために、後世に伝えるべき事実と、廃炉作業の進捗を知る機会を提供する場所でもある。
開館から1年。同館館長である鶴岡淳さんと廃炉資料館グループ主任の牧ノ原涼子さんが、資料館のこれから、そして「使命」について語った。
さまざまな来館者、それぞれの思い
「昨年12月1日には来館者数が延べ5万人を超えました。これは当初予想の2.5倍を上回る数字です。国内だけでなく海外からのお客様もいらっしゃっています」と話すのは鶴岡館長。各展示の説明パネルは日英表記で、実際、記者が話を聞いている間も、外国人グループが展示物をじっくりと見ている姿があった。
案内は館内2階のシアターホールから始まった。ここでは、2011年3月11日の東日本大震災発生から、福島第一原子力発電所敷地内に襲い掛かる津波、電源を喪失し停電で真っ暗な中央制御室で必死に事態の打開を図ろうとする職員を描いた再現フィルムが生々しく映し出されていた。
原子炉の各号機で実際に何が起きたかは、シアターホールと同じ2階にあるAR(拡張現実)を使った展示で詳しく解説している。原子炉の冷却機能喪失により、注水を試みる消防車、水素爆発を起こし煙が立ち込める1、3、4号機の建屋など、電源が復旧するまでの11日間の経過が表現されている。
鶴岡館長は、「事故を決して風化させず、事実を伝え続けていくことが、私たちの使命です」と語る。その根本にあるのは、反省の気持ちだ。「福島への責任を果たすために会社が存続している。ゼロから反省して教訓を得なければ、次がありません。社員一人ひとりが反省と教訓を胸にし、学んでいかねば」と力を込めた。
展示物の中にも「反省と教訓」というコーナーを設け、事故を繰り返さないために、事故の根本原因と背後要因を調査・分析した結果を報告している。
鶴岡館長によると、来館者が記入したアンケートの中には「勉強になった」「後世に残る良い資料」との意見があった。被災者の一人は「なぜ自分が避難しなければならなかったのか、展示を見て分かりました」と回答した。
一方で「反省と言われても心に響かない」という厳しい指摘もある。来館者の思いは、それぞれ違って当然だ。その中で「まずは、私たちがどう反省しているかをきちんと皆様に伝えていくことが大事だと思います」と、鶴岡館長は話す。