大相撲の大関・豪栄道(境川部屋)が2020年1月27日、引退を決めた。師匠である境川親方(元小結・両国)が、日本相撲協会に引退の意向を伝えた。
名前の「豪」と出身校の「栄」、ご当地場所を前に...
大関・豪栄道――。本名は沢井豪太郎。大阪府寝屋川市出身で、小学生のころから相撲を取り始めた。高校の進学は、相撲の名門校である埼玉栄を選んだ。高校では相撲部の主将も務めた。名前の「豪」と出身校から「栄」の文字を取り、付いたしこ名だった。
大関在位は33場所で、歴代10位。しかし2020年初場所で5勝10敗と大きく負け越し。3月に行われる春場所では、関脇となってしまう。そんな33歳の大関は、今場所限りで引退を決断した。まさに、豪栄「道」だったのだろう。
大阪出身の豪栄道は、毎年の春場所(大阪で開催)を楽しみにしていた。名物のお好み焼き、たこ焼きが大好きだった。記者はかつて「東京のたこ焼きは?」と聞いたことがあったが「東京のは外がカリカリやんか? あれは『たこ焼き』ちゃう。『たこ揚げ』やん」。また同じく大好きな串揚げ店にも、足しげく通い「昨日、行ってきたわ。何本? 分からん。メッチャ、食った」と目を細めて笑っていた。
当時、全盛だった朝青龍(元横綱)が、豪栄道の台頭を気にしていたことも思い出す。「アイツ(豪栄道のこと)、オレに似ている」と漏らしたこともあった。確かに、力士の中では大柄ではないが、立ち合いから瞬発力で持っていくスピード相撲は似ていた。朝青龍は、出稽古で境川部屋にたびたび赴き、豪栄道に胸を出していた。
2020年の初場所千秋楽では、負け越した大関に珍しく「豪栄道~」というコールが起きた。解説を務めた舞の海秀平さんが「(お客さんは)引退ということを思っているんでしょうか?」と発すると、解説の北の富士勝昭さんは「ないでしょ」。しかし、本人は違った。察するに「陥落した姿など、地元のファンに見せられない」と考えたのかもしれない。
3月の春場所において貴景勝は「1人大関」となる。ところで、角界には「横綱大関」という地位が存在することをご存じだろうか? 相撲大辞典などによると「大関不在(空位)、または1人大関の場合に、横綱が大関の地位も兼任する」というものである。
1982年の北の湖以来、38年ぶり
この「横綱大関」は1982年の初場所の横綱・北の湖以来、38年ぶりだという。当時の琴風(現・尾車親方)が1人大関となったためだそうだ。これは、江戸時代に始まったとされている大相撲で、当時は「大関」が最高位だったことに由来する。その後に「横綱」という地位ができたため、極端な話、横綱は1人もいなくてもいいが「大関は必要」という考え方からだという。
初場所では、東横綱の白鵬、西同の鶴竜が序盤戦で休場した。東より西の方が「番付が下」となるため、春場所は鶴竜が横綱大関ということになる。
横綱大関も普通に綱を締めて土俵入りし、いつもの横綱と何ら変わりはない。一方で過去の番付表では、横綱大関の4文字が圧縮されたような形で並び、その名前に冠せられる形となった。ただ、38年ぶり。今回は「横綱大関」が番付表に表記されるのか...といったところも、春場所では注目されるかもしれない。
(J-CASTニュース編集部 山田大介)
【追記】文中に一部、誤りがあったため修正しました