東京マラソン財団は2020年1月28日、東京マラソン(3月1日・東京都庁発~東京駅前着42.195キロ)のエントリー選手を発表した。
同レースは2020年東京五輪男子代表の残り1枠を争うMGCファイナルチャレンジを兼ねており、代表の座を狙う日本記録保持者の大迫傑(28)=ナイキ=、設楽悠太(28)=ホンダ=、井上大仁(27)=MHPS=らがエントリーした。
豪華招待選手に世界的高速コースで記録更新の期待が
3枠目の代表を巡って大迫、設楽の直接対決で注目される東京マラソンは、海外招待選手も豪華な顔ぶれがそろった。前大会優勝者で2時間2分48秒の自己記録を持つビルハヌ・レゲセ(エチオピア)を筆頭に、2時間3分台の記録を持つゲタネ・モラ、シサイ・レマのエチオピア勢が名を連ねる。海外招待選手11人のうち9選手が2時間5分50秒の日本記録を上回る自己記録を持っている。
MGCファイナルチャレンジは、東京マラソンとびわ湖毎日マラソンの2大会が残されている。いずれかの大会で2時間5分49秒を突破した日本人最速選手が五輪代表に内定する。この2つのレースで設定記録の突破者が現れなかった場合、昨年9月に行われたMGCで3位に入った大迫が代表となる。大迫はファイナルチャンレンジに出場せずに結果を「待つ」という選択肢もあったが、自らの脚で代表の座を射止める選択をした。
東京マラソンは2017年にコース変更され、世界的な高速コースとなった。この3年間の優勝タイムをみると、17年は2時間3分58秒、18年は2時間5分30秒、19年は2時間4分48秒と、ハイレベルでのレースが続いている。18年には設楽が当時の日本記録である2時間6分11秒をマーク。同レースでは井上も2時間6分54秒の自己新を記録し、5位に入賞している。
大阪国際女子ではペースメーカーが好記録に貢献
今大会は海外招待選手の顔ぶれからも高速レースが展開されることが予想される。東京マラソン財団はこの日、出場選手とともに5人のペースメーカーを発表した。1月26日に行われた大阪国際女子マラソンでは日本長距離界のエース新谷仁美(積水化学)が12キロまでペースメーカーを務め、レースをうまく誘導したことが大きな話題となり、松田瑞生(ダイハツ)の設定記録突破に貢献した。
今大会は4人のケニア人選手と鎧坂哲哉(旭化成)がペースメーカーを務める。ペースメーカーのひとりであるルベン・キプロプ(ケニア)は昨年、日本記録を上回る2時間4分40秒をマークした高速ランナーだ。ペースメーカーは30キロまで集団を先導し、ペースメイクを行う。
気になるペース配分について、東京マラソンのレースディレクターである早野忠昭氏は「東京マラソン2020」公式サイト上で次のように言及している。
「日本勢の大半が付いていくのではないでしょうか」
「現段階では、男子のペースメーカーは2段階に分けて考えています。一つはレゲセらアフリカ勢が中心となり、2時間2分台のフィニッシュをイメージしています。もう一つは 2 時間 4 分 40秒から 5 分 30 秒くらいがターゲットタイムとなります。東京五輪の3枠目を狙い、日本勢の大半が付いていくのではないでしょうか」
2時間2分台の記録を持つレゲセが記録狙いに来るならば、30キロまでの5キロごとのラップは14分30秒前後が見込まれる。2018年に設楽が日本記録を更新した時の30キロまでの5キロごとのラップは、14分51秒から57秒の間で推移した。レゲセが19年のベルリンマラソンで2時間2分48秒をマークした時の最初の5キロの入りのタイムは14分25秒と、かなりのハイペースだった。
レゲセの出方次第でレース展開は大きく変わってくるだろう。「2時間5分台なら五輪辞退」を公言する設楽。自身の持つ日本記録を更新して自力での代表を目指す大迫に、最後のチャンスにかける井上。五輪代表残り1枠をかけた熱き戦いが東京を舞台に繰り広げられる。