岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち ソレイマニ「殺害」の背景にも福音派の声

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クッズ部隊の狙いは「エルサレム奪還」

   米国には、40年前の苦い経験もあった。1979年11月、イランの首都テヘランの米大使館に学生のデモ隊が乱入。これを占拠し、アメリカ人外交官やその家族52人を人質にした。

   ジミー・カーター大統領(当時、民主党)は、対応の拙さと遅れを厳しく非難されて国民の指示を失い、次の大統領選では共和党のロナルド・レーガン氏に敗北。人質はカーター氏辞任の日に444日ぶりに解放された。

   トランプ氏は、ソレイマニ氏殺害に対してイランが報復に出れば反撃し、「52目標を破壊する」と威嚇した。「52」はイランの米大使館人質事件で人質になったアメリカ人の数だ。

   ソレイマニ氏の指揮により、イラク戦争に関係する戦闘で米兵600人以上が殺されていることもあり、ベンガジとイラン大使館人質事件の二の舞は踏まないという思いが、トランプ氏にはあったようだ。

   ソレイマニ司令官は、イランで「英雄」と称えられる一方で、国内でも自由と民主主義を求める反体制派にとっては、残虐で暴力的な独裁者だった。

   トランプ氏は今回の決断で、大統領選を前に「リーダーとしての強さ」を見せつける狙いもあっただろう。

   2020年1月3日、フロリダ州マイアミで行われた、トランプ氏の厚い支持基盤とされるキリスト教福音派の集会で、「昨夜、私の指示で米軍はテロリストを殺害した」とその正統性を強調している。

   2019年12月、福音派のある有力誌が立て続けに、大統領罷免を求めるなど、トランプ氏を非難する論評や社説を掲載。危機感を強めたトランプ氏は、その直後に、この年明けの福音派支持者集会の開催を発表した。

   ソレイマニ氏が司令官を務めていた「クッズ部隊」は、「イスラム教徒の土地」の解放を目的としている。「クッズ」はアラビア語の「エルサレム」にその由来があり、パレスチナのテロ組織「ハマス」も支援する。

   これは、イスラム教にとってメッカ、メディナに次ぐ第3の聖地エルサレムの奪還を狙うことを意味している。

   一方、白人キリスト教福音派の8割超は、「イスラエルは神がユダヤ人に与えた土地」と信じている。

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