欅坂46の平手友梨奈さん(18)が2020年1月23日にグループからの脱退を電撃的に発表した。ところが、23日のグループからの公式発表は同日卒業のメンバーがいるにもかかわらず、平手さんのみ「卒業」ではなく「脱退」となっていた。
なぜ平手さんだけが「脱退」なのかと、発表そのもの以上に「脱退」が波紋を呼んだ。その理由は明かされていないが、平手さん本人の「意思を尊重した」と報じられている。
では「卒業」「脱退」なぜアイドルファンは異なる印象を抱くのか、イメージが定着した理由、あえて「脱退」と伝えたアイドル、それぞれの事情を探った。
「脱退」「卒業」の分かれ目は?
1月23日の欅坂46からの公式発表を再度見てみると、同日付けで平手さんが「脱退」、鈴本美愉さんと織田奈那さんが「卒業」と発表された。一方でこれまで欅坂からの卒業メンバーは5人で、活動開始初期に「活動辞退」となったメンバー1人を除いて、「卒業」と発表されてきた。
アイドルファンの間では、現在では一般論として、「卒業」は円満にグループ活動を終え、「脱退」には何らかの裏事情があるのではという、ネガティブな印象がある。ではこのイメージがどうやって定着したのだろうか。2000年代以降のアイドルの進退にまつわる報じ方をさかのぼって調べると、「卒業」「脱退」の感覚の違いは00年代後半に顕著になってくる。
2000年前後、当時人気絶頂にあったモーニング娘。のメンバーのグループ離脱は、当初は「脱退」と報じられる場合がほとんどだった。01年4月卒業の中澤裕子さんの頃から「卒業」と報じられる場合が増えてきた。
それでも00年代前半の報道を調べると、「脱退」「卒業」が同じ記事での中で使われていたりと、まだ両者の使い分けは曖昧。ただしグループを離れる最後のイベントの記事では中澤さん以前から「卒業」が使われるケースが多く、「卒業」にはメンバーの前向きな門出を祝う情緒的なニュアンスが込められているようだ。
対照的なのは、2007年にモーニング娘。(現モーニング娘'20)を離れた吉澤ひとみさんと藤本美貴さんのケース。1月に発表し、5月に卒業した吉澤さんがスポーツ紙各紙で「卒業」と報じられたのに対し、現夫である庄司智春さんとの交際報道(5月)をきっかけに、自ら脱退(6月)を申し入れた藤本さんは、報道と所属事務所発表においても「脱退」の語が使われた。
以後、モーニング娘'20などが在籍するハロー!プロジェクトのメンバーについては、事前発表の上で卒業コンサート等が予定されるケースは「卒業」、不祥事・怪我・体調不良などで活動継続が難しくなったと公表されている場合は「脱退」「契約解除」としておおむね発表されている。
本人意志で「脱退」とする例も
2010年代以降のアイドルグループのケースでも、穏健にグループを離れる場合は「卒業」と伝えられるのが大半だが、急遽のグループ離脱には「脱退」「契約解除」「活動辞退」と発表される。原則「卒業」と発表してきた乃木坂46やAKB48系列であっても、「契約終了」「活動辞退」と発表される場合は、スキャンダルや体調などの特殊な事情が影響している場合がほとんど。こうした習慣から「卒業」と発表されない場合にネガティブな印象がついてまわるようになった。
だが、本人の意志であえて「脱退」と発表する例もある。2011年にももいろクローバー(現:ももいろクローバーZ)を脱退した早見あかりさんは、「ももクロでやりたかったことを成し遂げられていないから、あえて脱退と伝えた」という旨を2019年に出演した番組で告白した。2018年に同グループを離れた有安杏果さんの場合は「卒業」と発表されているので、早見さんの意志によることが見てとれる。
でんぱ組.inc元メンバーの最上もがさんは平手さんの脱退を受けて、20年1月23日にツイッターで
「卒業と脱退の違いの話で、ぼくは"脱退"、ねむ(註:元メンバーの夢眠ねむさん)は"卒業"したけれど、続けたくても身体的にも精神的にも限界だったために、抜けざるを得ないという選択を自らしたので、どうしても卒業という表現ができなかった。ねむはちゃんと今後のことを見据えて決めていた、の違いかなって」
と自身の状況を振り返って見解をつづった。
もともと欅坂46はメンバー卒業のための特別なイベントは行ってこなかった上、同時にグループを離れる鈴本さん・織田さんと平手さんの間に「卒業」「脱退」以外に大きな差異はない。今回「脱退」と記されたのは平手さんの固い意志も反映されているとみられるが、欅坂46の象徴的存在で知名度・人気とも高かった平手さんだけがあえて「脱退」と発表された衝撃が、さまざまな憶測を呼んだようだ。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)