税収増から軽減税率、ポイント還元を差し引くと...
2019年度補正予算規模が4.3兆円というのは興味深い。昨年10月の消費増税は2%だが、その税収増は5.6兆円だ。これから、軽減税率1兆円、ポイント還元0.3兆円を差し引くと、マクロ経済に対するマイナス効果は4.3兆円となる。2019年度補正予算4.3兆円は、ちょうどその分を吐き出し、マクロ経済へのマイナス効果を相殺しようとするものだ。これを昨年の臨時国会で行っておけば、消費増税の当面の悪影響は少なかっただろうが、打つタイミングが遅れすぎた。
それにもかかわらず、日銀は景気の下支えのための金融緩和を行わなかった。金融政策決定会合では、2人の委員は反対したが、残り7人の賛成で現状維持だった。反対した2人のように、マイナス金利を深掘りすると、実は政府はさらに公共投資がしやすくなる。
そもそも、今の金融政策でも10年国債金利はゼロ、10年未満ではマイナス金利になっている。本来は、国はマイナス金利ならゼロ金利になるまで国債を発行すべきだ。労せずに国債発行だけで政府収入が得られるし、無コストで公共投資が行える。日銀は、国債発行を政府に促す意味で、消費増税の悪影響を理由としてさらなる金融緩和政策にすべきだった。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「韓国、ウソの代償」(扶桑社)、「外交戦」(あさ出版)など。