ドラッグストア大手のウエルシアホールディングス(HD)の株価が、「過去最高」となる決算の発表後に、一時下落する場面があった。
業績予想の上方修正を見送ったことによる「肩透かし」感が広がったためとみられるが、一方でそれは、同社、ひいてはドラッグストア業界の好調を映したものともいえそうだ。
調剤部門の伸長が好調支える
ウエルシアHDの株価は2020年1月9日、一時前日終値比6.2%(440円)安の6580円まで下げた。前日の取引終了後に発表した2019年3~11月期連結決算は純利益が過去最高となるなど業績が改善したが、市場が期待した業績予想の上方修正を見送ったことで、投資家の間に肩すかし感が出て売りが膨らんだ。
まず1月8日発表の決算の内容を確認しておこう。売上高は前年同期比10.8%増の6412億円、営業利益は24.9%増の245億円、経常利益は22.9%増の265億円、純利益は21.5%増の159億円と堂々の2桁増益を記録した。
その要因は、利益率の高い調剤部門の伸長にある。「ウエルシア薬局」をはじめとするドラッグストアに調剤薬局を併設する店舗が増加しており、2019年11月末現在で1393店舗。これはグループ全1998店の69.7%に及ぶ。処方箋を出してからの待ち時間に他の買い物もできるため調剤専門店から利用者を引き寄せており、併設を増やした効果が出ている。実際、調剤部門の売上高は前年同期比19.7%伸びており、化粧品(11.1%増)や食品(9.9%増)、家庭用雑貨(8.2%増)など他のどの部門よりも伸び率が高かった(化粧品の1割超もかなり好調と言えるが)。
もともとドラッグストアは小売り業界の中でかなり業績好調な部類ではある。2019年度の大手5社(マツモトキヨシHD、ウエルシアHD、スギHD、サンドラッグ、ココカラファイン)の上半期は5社とも純利益が過去最高を記録した。
去年3月から一時は倍以上に
人件費や材料費、物流費がかさむ中にあって、調剤部門の伸張に加え、プライベートブランド(PB)商品の積極展開も利益を押し上げている。PB商品は一般メーカーによるナショナルブランドより利益率が高いだけに売れば売るほど利益が出る。消費税増税などによって財布を締めがちな客もナショナルブランドより若干価格が安いPBを選ぶ傾向にあるという。マツモトキヨシHDとココカラファインが2019年8月に経営統合の協議に入るなど、再編による成長を探る動きも進んでいる。
こうした中で投資家の間にはウエルシアHDに対する成長期待が強く、2019年3月25日の昨年来安値(3565円)から年末終値(6950円)への上昇率はほぼ2倍となった。年明け1月7日には上場来高値の7260円をつけたところだった。そこまで期待が高まっていただけに、最高益であっても業績予想の上方修正がないことに株式市場は失望したわけだ。高値警戒感からいったん利益を確定しようとする売りもあったとみられる。
とはいえ、調剤部門がさらに伸びると見られており、数ある上場企業の中でも成長を期待できる企業の一つには違いない。野村証券は1月7日付のリポートで2019年3~11月期連結決算で「収益性良化を確認」とし、「自動発注システムの導入により一段のコスト圧縮効果が期待できる」と指摘した。
その後は上下を繰り返しつつも、22日時点では6700円台まで戻している。通期決算の内容が明らかになる段階には株価がさらに上昇する可能性もありそうだ。