「森保監督にも迷いがあっただろう」
問題はそのチームを率いる森保監督だ。名良橋氏は指揮官の胸中を次のように推測する。
「A代表との『兼任監督』の難しさが出たように思う。海外組もMF食野亮太郎選手以外呼べなかった。森保監督は代表日程が被ればA代表に帯同しており、五輪代表につきっきりではなかった。今大会は選手の見極めに比重を置いたのではないかという印象がある。
もちろん勝利にはこだわってほしい。交代カードを切るのが遅いのも気になった。だが、この高温多湿な環境、この真剣勝負の場で、どの選手に何ができるのか、そのジャッジを慎重にしながら采配していたように思う。
東京五輪が半年に迫り、選手を選考する時期として遅いとは思うが、五輪メンバーは18人しか選べない。誰が戦えるか見極めないといけない。フィールド選手でMF遠藤渓太選手とMF菅大輝選手を一度も起用しなかったのは疑問が残るが、森保監督にも迷いがあっただろう」(名良橋氏)
ただ、監督だけの問題とは言い切れない。日本サッカー協会のサポートも問われてくるという。
「兼任で森保監督の負担が大きい中、技術委員会中心に協会はサポートできているのか。戦い方や選手選考など、最終的にまとめるのは森保監督だろうが、その前に情報を集約できているのか、森保監督に頼りすぎていないかという心配はある。五輪は代表に拘束力がないので、所属クラブが海外組の選手招集に応じるかどうかも不透明。そこは協会が力を惜しまないといけない。
かつて(フィリップ)トルシエ監督も(00年シドニー五輪代表とA代表の)監督を兼任していたが、代表への注目度は当時より格段に増した。今はアジアで勝って当たり前という空気があるし、東京五輪は優勝を目標に掲げている。プレッシャーは大きい。五輪世代にも海外組が増えてきたし、さらにオーバーエージの生かし方も考えないといけない。選手選考は相当迷い、長引いていると思う。その迷いが、チームコンセプトを落としきれない状態につながっているのではないか」(同)