仮想通貨取引所の規制強化を軸にした、新たな改正資金決済法と改正金融商品取引法(以下、改正金商法)が2020年6月までに施行される。
仮想通貨レバレッジ(デリバティブ取引)にかかる自己資本規制などから、ただでさえ業況が良くない国内仮想通貨業界は厳しい戦いが強いられ、大きな変動が予想されている。
国内仮想通貨業界は厳しい業況
このうち改正金商法では、取引所がデリバティブ取引に関して証券会社と同水準の自己資本規制が求められるほか、オンライン管理の「ホットウォレット」について、仮想通貨流出時に弁済費用として、同種・同量の仮想通貨の保持が義務付けられる。そのため、取引所はこれまで以上に内部管理体制と資金力の強化を図る必要がある。
しかし決算報告から見ると、各取引所がそうした変化に耐えられる状況であるかは疑問が残る。仮想通貨交換業全体で、安定して利益を上げ続ける企業が少ないからだ。
主要10社(ビットフライヤー、ビットバンク、SBIVC、GMOコイン、BTCBOX、DMMBitcoin、Bitgate、コインチェック、楽天ウォレット、ディーカレット)のうち、2018~19年度のPL(損益計算書)は、6社が赤字。残る黒字企業の4社(ビットフライヤー、SBIVC、GMOコイン、DMMBitcoin)でも、企業の理想的な財務指標として求められる自己資本比率30%、ROE(自己資本利益率)10%以上を満たすのは、DMMBitcoinしかない。
改正金商法では、デリバティブ取引の上限が4倍から2倍に引き下げられる。倍率引き下げは、安定した取引の保証につながる一方で、ユーザーの海外取引所への流出が見込まれ、国内取引所はさらなる収益悪化が危惧されている。国内仮想通貨の取引量比率は現在、現物取引が1に対し、デリバティブ取引が7~8。仮想通貨ビジネス協会(JCBA)の廣末紀之会長の試算では、後者は5に減少するとされ、取引所のPLはさらに悪化し、経営が厳しい状況下に置かれるのは明白だ。
取引所運営は、そもそも金融庁からの認可取得が難しいだけでなく、セキュリティなど取引システムの構築に要するコストが莫大だ。それだけに、今回の法改正が与える影響は大きい。対応するための増資や取引所の買収・統合も起きてくるだろう。
なお、一連の法改正の効力は既に、他分野に及んでいる。SNS「VALU」を運営するVALU社は2020年1月15日、3月2日付で擬似株式「VAトークン」などの売買を終了すると発表。改正資金決済法に含まれる仮想通貨カストディ業務規制への対応を受けた格好で、ビットコインを使っているVAトークンを3月31日からユーザーに返却する。金融とITを融合したフィンテックを筆頭に、今後も法律の影響が広がっていきそうだ。