不利益変更でも、直ちに違反になるとは限らず
もう一つのポイントが、「ワンデリバリー」構想だ。2000億円を投じて物流網を整備し、独自の配送サービス「Rakuten EXPRESS」を拡大するものだ。すでに700億円を投じており、大阪(牧方)、兵庫(川西、尼崎)、千葉(市川、流山)、神奈川(相模原)の6拠点を整備、2020年中に千葉(習志野)と神奈川(中央林間)も加えて8拠点体制とする計画だ。さらに、これら拠点に遠い北海道と九州には小規模な配送拠点の設置も検討しているという。出店者は楽天の物流拠点に商品を持ち込めば、そこから先の消費者までの配送は楽天に任せることになる。出店者の配送負担は、他の物流業者に委託するより軽減されることになる。
楽天は、「Rakuten EXPRESS」のカバー人口を現在の30%から2021年に60%に引き上げ、出店者の配送量の約10%を担うだけなのを50%にアップさせる考え。「配送料一律無料」はこうした物流強化の前提でもあり、目的でもある。まさに一体のものなのだ。
とはいえ公取委の山田昭典事務総長は11月の会見で、「(楽天など主要なデジタルプラットフォーマーが)自社の便益を図る目的で取引の相手方に不当に不利益を与えるやり方で取引条件を変更することは独禁法上の問題となりうる」と述べている。ただ、独禁法の専門家の解釈では、仮に不利益を与える変更でも、直ちに違反になるとは限らず、全体として適正といえる状況かどうかが判断の分かれ目という。その施策(今回は無料配送)が合理的か、また、事前に理解を得る努力を十分に行ったかなどがポイントになる。
説明会の開催、独自の配送網整備による出店者の負担軽減などを総合的に、どのように判断するか、公取委の対応が注目される。