東京大学が2020年1月15日、同大大学院情報学環・学際情報学府の大澤昇平特任准教授を同日付で懲戒解雇処分としたと、公式サイトで発表した。
大澤氏は、AI(人工知能)開発などを行う「Daisy」代表取締役でもあるが、ツイッターで「弊社 Daisy では中国人は採用しません」などと投稿したことが物議を醸していた。
「差別」だと批判されていた
大澤氏は19年11月20日、「中国人のパフォーマンス低いので営利企業じゃ使えないっすね」「そもそも中国人って時点で面接に呼びません。書類で落とします」などと投稿。「どストレートな差別」などと疑問視する声が相次いだ。大学院は28日、越塚登・学府長名義のメッセージで「特定の国籍または民族による差別が含まれており、学環学府として到底許容できるものではありません」と非難し、大澤氏が担当する寄付講座には、出資企業から続々と寄付停止の方針が出された。なお同氏は12月1日、ツイッターで謝罪し、「一連のツイートの中で当職が言及した、特定国籍の人々の能力に関する当社の判断は、限られたデータにAIが適合し過ぎた結果である『過学習』によるもの」だったと説明していた。
20年1月15日の東大発表文では、同大の里見朋香・人事労務担当理事名義で、以下の事実を認定したとした。
「大澤特任准教授は、ツイッターの自らのアカウントにおいて、プロフィールに『東大最年少准教授』と記載し、以下の投稿を行った。
(1)国籍又は民族を理由とする差別的な投稿
(2)本学大学院情報学環に設置されたアジア情報社会コースが反日勢力に支配されているかのような印象を与え、社会的評価を低下させる投稿
(3)本学東洋文化研究所が特定の国の支配下にあるかのような印象を与え、社会的評価を低下させる投稿
(4)元本学特任教員を根拠なく誹謗・中傷する投稿
(5)本学大学院情報学環に所属する教員の人格権を侵害する投稿」
当該寄付講座は年度末で廃止予定
一連の事実認定をもとに、東京大学短時間勤務有期雇用教職員就業規則に基づき、懲戒解雇処分とした。加えて発表文では、「東大最年少准教授」の肩書のもとに「国籍・民族を理由とする差別的な投稿」や、東大関係者への誹謗中傷が行われたことを「誠に遺憾」として、「このような行為は本学教職員として決して許されるものではなく、厳正な処分をいたしました」。今後、再発防止に向けての環境整備を行うとしている。
また、情報学環・学際情報学府の公式サイトも15日、越塚学府長名義のコメントを掲載した。そこでは、
「東京大学は学問の府であり真理を探求する場です。そのために、多様な人々がそれぞれの立場から自由闊達に議論できることが本質的に重要であるのは言うまでもありません。しかしそれは、SNS等のメディアを含む公の場において、いわれなき個人攻撃や差別をまき散らしてよいことを意味しません。そのような行為は、むしろ自由闊達な議論や言論を封殺し、侵害するものです。一連のSNSへの書き込みについて、私たちはこれを決して許されるものではないと考えています」
などとして、当該寄付講座は本年度末(19年度末)をもって廃止し、原因究明と再発防止に向けて調査委員会を設置する予定だとした。
なお15日11時30分現在、大澤氏のツイッターでは、発表文に対する反応は出されていない。