米朝の「仲介者」を自任してきた韓国に対して、北朝鮮が改めて激しい言葉で批判を展開している。韓国は米国のトランプ大統領から託されたという金正恩・朝鮮労働党委員長への誕生祝いのメッセージを北朝鮮に伝えたが、北朝鮮側はメッセージを米国から直接受け取ったことを明らかにした。
その上で韓国側を「一家族でもない南朝鮮」「介入して元金も取れない馬鹿」なとど罵倒したが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が2020年1月14日に開いた記者会見で口にしたのは、米朝をめぐる動きを「非常に肯定的に評価」し、南北関係も「私は楽観的な見通しを持ちながら進めている」といった言葉だった。
「息せき切って興奮の余り全身を震わせて大緊急通知文で...」
発端は、鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が訪米を終えて1月10日に仁川空港に帰国した際の報道陣への発言だ。鄭氏によると、トランプ氏と面会した1月8日が金正恩氏の誕生日にあたるとして、トランプ氏から誕生祝いのメッセージを「金正恩委員長に伝えてほしい」と依頼されたという。
北朝鮮側の反応は素早く、1月11日付で外務省の金桂官(キム・ケグァン)顧問による談話を発表した。談話では、韓国側がトランプ氏のメッセージを「大緊急通知文」で伝えてきたとしながら、韓国側の行動を皮肉った。
「おそらく南朝鮮当局は朝米首脳の間に特別な連絡ルートが別にあることをまだ知らないようだ。南朝鮮当局が息せき切って興奮の余り全身を震わせて大緊急通知文で知らせてきた米大統領の誕生日祝いのあいさつなるものを、われわれは米大統領の親書で直接伝達された状態である」
その上で、韓国を「一家族でもない南朝鮮」と表現し、「自分らが朝米関係で『仲裁者』の役を担ってみようとする未練が依然と残っているようだ」、韓国が米朝間に割り込もうとすることについて「少しせん越なことだと言わざるを得ない」などとこき下ろした。
北朝鮮側は「誕生日祝いのあいさつ」の内容については論評しておらず、これまで公式には認めてこなかった金正恩氏の誕生日が1月8日だという点を事実上認めたともいえる。
米朝「非常に肯定的評価」、南北「楽観的見通し」
金桂官氏の談話では、膠着状態にある米朝関係について、「わが国務委員長とトランプ大統領の親交が悪くないのは事実」だとしながらも、対話の再開には米国側が北朝鮮側の要求を全面的に受け入れることが前提だと主張。その上で
「われわれは米国がそのようにする準備ができておらず、またそのようにすることもできないということをよく知っている」
とも指摘し、膠着状態が継続するとの見方を示した。さらに、韓国に対して
「介入して元金も取れない馬鹿の境遇になるのを願わないならば自重している方がよかろう」
と念を押した。
だが、1月14日の記者会見で文大統領から語られたのは、極めて楽観的な見通しだ。米朝関係について
「対話が活発な状態ではないが、まだ会話をしようというトランプ大統領と金委員長、両首脳間の信頼は続いており、そのような努力も続けられている。そのような点で、私は非常に肯定的に評価したい」
などと言及した上で、南北関係についても「同じ」で、
「困難を経験しているが、対話を通じて協力を増やしていこうとする努力は今でも続いている」
と説明。「私は楽観的な見通しを持ちながら進めている」とした。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)