解禁は一気に進む?様子見が多い?
実際に、企業が解禁に一気に動くかは微妙。パーソル総合研究所が2019年に企業の人事担当者1000人に対して実施した調査では、副業・兼業を「全面的に認めている」13.9%、「企業が設定した条件をクリアした場合に認めている」36.1%、「全面的に禁止」50%と真っ二つに分かれ、全面禁止のうちの7割は「今後も全面的に禁止していく」としている。
さらに、深刻な「過労死」問題は続いている。厚生労働省の労働政策審議会は2019年12月、副業や兼業で仕事を掛け持ちしている人の労災を認定する際、複数の事業所の労働時間を合算したうえで算出した残業時間を基に判断するという報告書をまとめた。20年度中にも労働保険法などを改正する見通しだ。だが、副業が一般化した場合、労働者が自身の健康をきちんと管理できるのだろうか。
具体的に考えてみると、労働時間の管理では、企業側が副業との通算の労働時間を把握し、過重労働になっていないかをチェックすることが必要になる。そのためには「従業員から副業・兼業として労働した時間を明確に申告してもらう」「週何時間までの副業・兼業であれば容認する」といった条件を設ける必要があるだろうが、それで本当に過労死を防げるか、疑問視する声が根強い。
過労死問題の専門家は「高い能力を生かして副業として起業などをしているのは生活に余裕がある一部の人に過ぎず、副業している人の多くは生活が苦しくて、副業で働かざるを得ない人。成果主義が広がる中で、働き方改革の名のもとに残業を減らすとの掛け声で労働時間を少なく申告することが横行している。労働時間の管理は一社だけでも難しいのが実態で、過労死が増える懸念は強い」と警鐘を鳴らす。
ある大手企業幹部が「企業にとってはまだまだ不透明な部分が多く、大半の企業はしばらく様子見を続けるのではないか」と語るように、副業容認は一気に広がりはしないとの見方が少なくない。