前日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告(63)が2020年1月8日に逃亡先のレバノン・ベイルートで開いた記者会見では、朝日新聞、テレビ東京、小学館の3社を除く日本メディアの大半が締め出された。自らに批判的なメディアを排除することで、同情的な世論の形成を狙った可能性もありそうだ。
その結果、ゴーン被告は日本の司法制度をめぐる問題点をアピールするのは一定程度成功したとみられる。ただ、欧米メディアからはゴーン被告の説明不足を指摘する声も相次ぎ、自らの無罪主張は必ずしも浸透しなかったようだ。
「多くの法律専門家が、日本の司法制度をめぐるゴーン被告の懸念を共有」
日本の司法制度をめぐるゴーン被告の主張に一定の理解を示したのがワシントン・ポストで、「ゴーン被告、日本の司法制度を『腐敗している』『非人道的』と非難」の見出しを掲げた。記事では、起訴が日産と検察の共謀によるものだというゴーン被告の主張に「主張は不合理で事実に反する」などと反論する東京地検の斎藤隆博次席検事によるコメントを紹介した上で、
「それでも多くの法律専門家が、日本の司法制度をめぐるゴーン被告の懸念を共有している。一方で、多くの外国企業の幹部は、実力とコネのある日本のビジネスパーソンが、日本の司法制度で似たような扱いを受けることは考えられない、と話している」
などと指摘した。
BBCはゴーン被告のプレゼンテーションぶりを高く評価。どういった論点に注目が集まるかを含めてゴーン被告側がコントロールに成功していると分析している。
「目を引くパフォーマンスだった。ゴーン被告はもはや自動車業界のスターではないが、真実が何か、容疑の有無にかかわらず、今でも明らかに会見場を引き込む方法をわかっている」
「彼の主張は詳細に調べられるだろうし、間違いなく日産と日本政府は反応するだろう。だが、彼は間違いなく議論の主導権を握っている。ドラマチックな逃走劇と結び付けて、見事にそうしてみせたのだ」