高校サッカーの試合中に見られた、敵味方の垣根を越えた振る舞いがインターネット上で注目された。
第98回全国高校サッカー選手権大会準々決勝、青森山田(青森)-昌平(埼玉)戦(3-2)が2020年1月5日、等々力陸上競技場で開催。接触プレーにより、青森山田のU-17日本代表DF藤原優大(2年)が倒れた時のことだ。「元チームメイト」の相手選手が駆け寄った。
ゴール前の競り合いで一時立ち上がれず
青森山田は2-0で迎えた前半36分、相手陣内で得たスローインからロングスローを試みる。182センチの藤原は相手GKの前でターゲットになり、手を挙げると、投げられたボールに合わせ、背後から来た昌平DF西澤寧晟(さだてる)(3年)と競り合った。
球際の攻防で、藤原は着地するや四つん這いにうずくまった。試合は続行されたが、昌平がピンチを脱し、プレーが途切れると、審判が倒れる藤原に駆け寄って一時中断した。
そこには競り合った相手、西澤の姿もあった。背中を軽く叩いてやると、どうにか立ち上がった藤原を背中にのせ、ストレッチを手伝った。プレーが続けられる状態に持ち直すと、藤原はケアしてくれた西澤の方を向き、感謝するように頭をポンと叩いた。走り出しながら、西澤も藤原の背中を押した。2人とも試合終了までプレーした。
小学校時代のチームメイト
相手同士ではあるものの体調を気遣うこのシーン、選手間では当たり前のように行われたのかもしれないが、テレビ中継で大きく映ったこともありネット上で話題を呼んだ。ツイッターでは、
「素晴らしいスポーツマンシップ」
「フェアプレーのかがみ」
「西澤君のこのスポーツマンシップ 現地で観て心打たれたなあ」
「杓子定規に急がせず暖かく見守る主審も素敵です」
といった声があがっている。
藤原と西澤は小学生時代、同じリベロ津軽SC(青森県弘前市)でプレーした元チームメイト。ウェブメディア「ゲキサカ」の5日の報道によると、2人は1学年違いながら仲が良かった。一緒にサッカーをするのは小学校以来で、連絡をとって「楽しもうぜ」と話していたという。藤原は試合後、敗れて泣き崩れる西澤から、日本一の思いを託されたという。
連覇を狙う青森山田は、前半終了間際にJ1・浦和レッズ入団内定のMF武田英寿(3年)が追加点をあげて3-0と突き放した。一方的な展開になるかと思わせたが、後半に昌平が猛攻。持ち味のパスサッカーが機能し、2点を返して3-2と、あと一歩のところまで王者を苦しめた。