国土交通省は2021年11月以降に販売する新型の乗用車に自動ブレーキの装着を義務付ける。
2019年6月、国連の「自動車基準調和世界フォーラム」が自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ=AEBS)の国際基準をまとめたことを受け、日本が世界で最も早く乗用車へ自動ブレーキの装着を義務づけることになった。
「世界に対するメッセージ」
赤羽一嘉国土交通相は2019年12月17日の閣議後記者会見で「歩行者も検知して自動でブレーキを作動させる衝突被害軽減ブレーキを世界に先駆けて、2021年11月から段階的に新車の乗用車などに義務づける方針を決定した」と述べた。
国交省によると、国連の国際基準が決まったことを受け、欧州が2024年前半の義務化を検討するなど各国で自動ブレーキの導入が進む見通しだ。赤羽国交相は「我が国の自動車産業界が、まず先進的なものを取れ入れ、国としても義務化するということは、世界に対するメッセージでもあるし、波及効果がたいへん大きい」と期待感を表明した。
国際基準を受け、国交省が義務化するのは、時速40キロで走行中に前方に停止している車▽時速60キロで走行中に時速20キロで走る前方の車▽時速30キロで走行中に道路を横断する歩行者――の3つのケースで衝突しないことだ。
国交省は国産車の場合、フルモデルチェンジする新型車については2021年11月、既に販売している現行モデルについては2025年12月から自動ブレーキの装着を義務付ける。輸入車については、新型車が2024年6月ごろ、現行モデルは26年6月ごろから義務付けることになる。
国交省は2014年から国内の自動車メーカーの「対車両」の自動ブレーキの性能評価(自動車アセスメント)を行い、2016年からは「対歩行者」の自動ブレーキをテストし、結果を公表してきた。「対歩行者」のテストは、試験車両を時速10~60キロの範囲で、5キロ刻みで走らせたうえ、路上に人形を飛び出させて、自動ブレーキで止まれるかを測定するものだ。
自動ブレーキで追突「5割減」の試算も
実際の試験は国交省が独立行政法人「自動車事故対策機構」に委託して行っている。対歩行者自動ブレーキなど試験の模様と結果は、同機構のホームページで動画を視聴できる。
日本の自動車メーカーは、「ぶつからないクルマ?」のキャッチフレーズで知られるSUBARU(スバル)の運転支援システム「アイサイト」が自動ブレーキの先鞭をつけ、2000年代後半以降に開発競争が激化した。トヨタ自動車は自動ブレーキだけでは歩行者などとの衝突が避けられないと判断した場合、自動でステアリングを操舵して衝突を回避する世界初のシステムを開発。2017年秋発売の高級車ブランド「レクサス」のLSに搭載するなど、世界的にリードしている。
国交省によると、自動ブレーキによって追突事故は5割減るという。自動ブレーキの義務化は軽自動車も対象としており、日本車に自動ブレーキが標準となることが確実となった。