「僕らは特別扱いを求めているのではない」――バス「乗車拒否」の車いす男性は、「クレーマー」の声に何を思う

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「バリアフリー」という言葉に感じることは...

   改善点でいえば、気になることがある。酒井さんは11月のある平日にも同じ大学のゲスト講師に招かれ、7月と同様に帝産バスを利用した。正午ごろに瀬田駅から乗ろうとしたが、3本続けて低床式でないバスが来た。物理的に乗ることができなかったため、結局40分以上待った。運行するバスの約8割が低床バスだとすれば、少なくとも2本に1本は来るはずではないかと疑問を覚えたという。

   J-CASTニュースが帝産湖南交通に問い合わせると、「どうしても偏りは出てしまいます。全時間帯均等に分散できているわけではなく、10本来たら必ず8本が低床バス、という風に上手くはいきません。平日はラッシュの朝夕に本数を多くし、昼間は少なくしているという配分の関係もあります」と説明した。それでも「ご指摘はもっともだと思いますので、今後検討します」と話していた。

   障害者差別解消法(2016年施行)は、障害を理由として正当な理由なく、サービスの提供を拒否・制限したり、条件を付けたりするような行為を「不当な差別的取扱い」として禁止している。事業者は、障害当事者らから配慮を求める意思表明があれば、負担になり過ぎない範囲で、社会的障壁を取り除くための「合理的配慮」に努めることが求められる。この配慮をせずに障害者の権利利益が侵害される場合も差別に当たる。同法に基づいて政府が示した基本方針では、同法の「合理的配慮」実現のための環境整備として、バリアフリー法が定める公共施設や交通機関の「バリアフリー化」などに努めることとしている。

   本当のバリアフリー社会実現のために、大事なことは何なのだろうか。酒井さんは最後に、次のように思いを明かした。

「『バリアフリー』という言葉は、その裏に『社会参加するうえで障壁となるバリアがあることが前提で、それを取り除く』という意味があると考えます。確かに分かりやすい表現ではありますが、僕たちが目指していることとは少し違います。

『心のバリアフリー』などという言葉をよく聞きます。それも、それだけでは個人の範疇の内で終わってしまう。キーワードは『インクルーシブな社会』です。そもそも障壁などなく、障害の有無に関係なく、各人が自分らしく生き、持てる力を最大限発揮できる社会を目指すべきものだと考えています。社会を変えることを考えるときには、今までの考え方からもう一歩踏み込む必要があると思います」

(J-CASTニュース編集部 青木正典)

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