「僕らは特別扱いを求めているのではない」――バス「乗車拒否」の車いす男性は、「クレーマー」の声に何を思う

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望むのは「誰もが平等に暮らせる社会=インクルーシブな社会」

   あれから約半年弱が経った12月19日、酒井さんが改めて取材に応じた。7月の路線バスでの出来事は、先のとおりネット上で注目されたほか、テレビのワイドショーなどでも取り上げられ、議論が交わされた。世間の話題となったことに「複雑な気持ち」を抱いた。

「今回の件を通じて多くの人が障害当事者の意見を聞き、少しでも考える機会になったことは嬉しく思います。重度障害者の国会議員が誕生した時期とも重なって一時的に『障害者』の話題が盛り上がりました。しかし報道の熱が冷めるにつれ世間の関心も薄らいできているかと思います。

障害当事者は日々、健常者なら経験しないような不快な思いをすることがあります。差別や偏見は日常的に続くもので、一時的な盛り上がりや低下はありません。運動の甲斐もあって徐々には減ってきていますが、まだまだ私たちが望む『誰もが平等に暮らせる社会=インクルーシブな社会』には程遠い現状です。今回の私の件も障害当事者からすれば氷山の一角で、その裏にはもっともっと多くの事例があります。社会が変わっていくためには、継続して考えることが重要です。そのためにも引き続き私たち障害当事者の声を聞いてほしいです」(酒井さん)

   酒井さんは生まれつき脳性麻痺があり、その中でも不随意運動(意図せず体が動くこと)などが起きるアテトーゼ型に分類される。電動車いすは独力で操縦でき、1人住まい。毎日の電車通勤も1人でしており、NPO法人障害者自立生活センター・スクラム(大阪市)で社会福祉士、障害者相談支援専門員として、地域の障害当事者の相談を受けている。「障害当事者が地域で自分らしく生活できるよう、権利擁護や啓発活動もおこなっています」と尽力する日々を過ごす。

   一方、「日常生活すべてにおいて介助が必要です」と暮らしの中でヘルパーの介助は必須だ。「筋力はありますが、コントロールが難しく、身体が勝手に動く(タイミングよく動かない)などがあります」と酒井さん。言語障害については「口頭での会話が難しいわけではなく、日常会話はもちろん、授業での講演も問題なく口頭でできます。ただ少し聞き取りにくい部分があったり、タイミングよく発声するのが難しかったりする特徴があります」という。

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