住む街を選ぶ基準にちょっとした変化が生じつつようだ。
住宅ローン専門会社アルヒ(東京都港区)が2019年12月に発表した1都3県の「本当に住みやすい街」のランキング結果によれば、トップは埼玉県・川口、次いで東京都北区・赤羽が2位になった。街選びにはどんな条件が好まれているのだろう。
以前のイメージより、今の便利さ
アルヒの調査結果は、2018年8月~2019年7月の1年間の住宅ローン融資実行件数を基に、住環境や交通利便性、教育環境など5つの基準で不動産の専門家が順位付けをした。あこがれなどではなく、「実際にその地域で生活するという観点から住まい選びの参考になるように選んだ」という。
川口が評価されたのは、新宿まで20分強など交通アクセスは良いのに、地価や物件価格が割安という点だ。中古マンションなら東京23区と比べ、1平方メートルあたり20万円超も安いともいわれる。さらに商店施設や公園も豊富で、生活するには快適だとされた。
川口といえば、かつては溶解炉「キューポラ」のある街とのイメージが強く、鋳物工場などが立ち並ぶと思っている人も多いかもしれない。だが、実際にはかつての工場の多くは姿を消し、駅前をはじめ、多くが大規模マンションに置き換わっている。
赤羽も、川口と同じような点が言える。元々、ディープな飲み屋街の印象が強いが、実際には商業街が多く、商業施設も豊富なうえ、都心とのアクセスも良く、住環境は良好だ。都心のマンションは高止まりして会社員には手の届かない存在になっているが、赤羽なら23区内にあるのに比較的手が届きやすい。赤羽の場合、リクルート住まいカンパニーが発表した「住みたい街」ランキングの関東版でも、2018年には19位につけるなど注目度が高まっている。
「今はとにかく利便性が重視されている」
こうした街が評価されているのは、イメージよりも、実際のコストパフォーマンス重視という世相が大きく関係しているといえそうだ。「かつては世田谷区に住みたいなどイメージに左右される傾向が強かったが、今はとにかく利便性が重視されている」(不動産関係者)という。特に若い世代は夫婦共働きが当たり前になっており、通勤に便利なことは住む場所を選ぶ際の大きな条件だ。コスパと利便性の重視は今後もいっそう強まるだろう。
一方、これまで人気が高かった地域に微妙な変化が表れている。タワーマンションに象徴される川崎市・武蔵小杉がその一つ。マンションの供給が増え、人口が急増した結果、最寄り駅の混雑が激しくなってなかなか入場できないなど問題が生じる中、2019年10月の台風災害で、タワーマンションの弱点が露呈した。「今後は防災面から立地や物件を選ぶ傾向も強まりそうだ」と話す不動産関係者も多い。